「たっつん〜」
YouTubeのチャンネルのヘッダーに描いてある12色のうちの青が基調のイラストに凄く似た彼、なおきりは撮影でもちょこちょこと軽く口説いていたたっつんに今日も今日とてしたたかに話しかけた。
「ん?どしたん」
なおきりは少し言葉を紡ぐのに間を開けて、なんだかほっとしながら、いつものように撮影の時のように話しかける。別に撮影の時だけあの接し方では無い。
「たっつん何してるの?」
「編集」
なおきりの質問にたっつんは間を開けないで即答した。なおきりはあとの会話に何を話そうか少し考えて、こう言った。
「突然だけど、最近ね〜気になる人が居て」
「ホンマ突然やな、なおきりさんに気になる人なんていたんか」
意外、と声色に出ているまま、回転する背もたれのついた高そうな皮の椅子をしゅーっと半周させてたっつんは休憩がてらにパソコンのキーボードから手を離して、なおきりからの恋愛相談?を素直に聞いた。
「俺ね、その人に告白しようかと思っているんだ」
なおきりは頬を少し紅に染めてもじもじしながら真剣な声色でそう言った。
「お〜??ええやん、しようや、しようや」
たっつんは少し揶揄うように口角を少し上げながらノリノリで、なおきりが告白することに賛成していた。
「でもね、どうやって告白にいたろうか悩んでて……」
なおきりはたっつんにいかにも相手と距離を詰めるアドバイスを求めた。
「うーん、じゃあさご飯に誘ったり、相手が喜んでくれそうなプレゼントをしたり、そうしたらいけると思うよ」
なおきりの悩みに真面目にたっつんはよく考えて、そうアドバイスをした。いい方法だ。
「うん、そうだね、やってみるよ」
「おん」
なおきりは悩んでいたのが嘘だったかのように奮然としていた。
そしてたっつんは突然なおきりに尋ねた。
「で、相手は誰なん?」
たっつんはその答えに期待していような目で腕を組んでソワソワとまばたきをしながらなおきりに言った。続けてたっつんは問う。
「もしかして俺とか言う?」
「うーん…それはどうかな……?」
なおきりは半目でニヤニヤしながらそう言った。彼らしい。
「え〜〜??揶揄わんといてよ〜!」
たっつんは少し疑うような声で楽しそうに笑いながら、まだニヤニヤしているなおきりの肩をバシバシと叩いた。なおきりはたっつんが笑っていることにドキドキして肩から感じる痛みどころではなかった。なおきりはそれを心の中に閉まって、また2人で笑いながら喋りだした。
「じゃあ〜、そろそろ編集再開するわ」
「おう、またな」
たっつんはなおきりとの会話をちょうどよく打ち切って2人は別れた。
なおきりがたっつんがじゃっぴとえとさんと一緒に住んでいるシェアハウスから出た瞬間、頬が一瞬でじわっと真っ赤になって両手で顔を抑えた。そして消え入りそうな声でこう言った。
「なんで気づかないんだよ、たっつん……」
そう、なおきりはたっつんとの会話中に遠回しにたっつんのことが好きだとか特徴とか愛してるとか伝えていたのだ。でも、たっつんは使っていたコップが入れ替わっていることに気づかない程の鈍感なのでなおきりの好意に気づかず普通に会話していた。
「あんな大胆に、誰でも気づくように言ったのに、気づかないなんて……」
「ほんとに鈍感だな……」
なおきりの声は上擦りながらも、その声には確かに愛という感情が篭っていた。
コメント
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なおきりさんがどんどん攻めて行かないのなんか新鮮ですごくいい…!!