もう秋になると言うのに朝から暑い。私は何か手紙が届いてないか郵便受を見る。だが何も入っていなかった。
「イヤホホホォー!」
するとグーフィーの家の方から爆発音と叫び声が聞こえて来た。私が見に行くとグーフィーが倒れていた。私は近くまで駆け寄り倒れているグーフィーを起こす。
「グーフィー!大丈夫?」
「うんヘーキだよ。実は家の模様替えをしてたんだ」
え?模様替えでこんな爆発普通起こる?
「実は家の中を弾むようにできないかと考えたんだ。そこでフォンドレイク教授に弾む光線銃を借りたんだ。でも爆発しちゃって。なかなかうまくいかないね」
グーフィーは説明しながら立ち上がり自分についた埃を払うとあたりに散らばっている瓦礫を片付け始める。
「手伝おうか?」
「アヒョ!ありがとう。でも大丈夫だよ。これぐらいなら一人で片付けられるよ」
「そっか。でも困ったらいつでも呼んでね」
「アヒョ!あ、そういえばさっき東の浜辺で君を探している人?がいたよ!」
探している人?誰だろう?とりあえず行ってみよう!私はグーフィーにお礼を言い東の浜辺へ向かう。
私は東の浜辺に行く。するとそこには紫のタコが貝でできたランタンを持って待っていた。
「あなたが私を探してたの?」
タコはうなづく。そしてランタンを渡してきた。
「もしかしてアトランティカに来て欲しいとか?」
タコはさらにうなづく。
「分かった準備するから待ってね」
私は人形服に着替えるとランタンを持ち海にあるマジックゲートを通り抜ける。
マジックゲートを通るとそこは海のそこだった。だが前に来た時よりも暗く感じる。なんでかと思い私はアトランティカへ向かう。すると私の方へ沢山の魚さん達が泳いでやってくる。
「わ!」
魚達は私を見ると元の道を引き返して行く。なんだったんだ?すると今度は黄色いお魚さんが私の元へくる。よく見るとその姿は、
「フランダー!」
「あかり!来てくれてよかった!」
「え?何かあったの?」
「いいから来て!」
フランダーは私をアトランティカの方に連れて行く。
私が着いたのは大きなドームのような場所だった。その中に入るとシャンデリアや貝や海藻など海の物で飾り付けたコンサートホールだった。
「すごーい!」
「そうだろ、国王陛下のアイデアなんだ!」
「セバスチャン!」
赤いカニのセバスチャン。ここアトランティカの王室専属の作曲家なんだ。
「国王陛下はアリエルの歌声を聞いてもらうためにこのホールを作った。今日はそのコンサートを開く。さああかりそろそろみんなやってくるよ!」
すると沢山のお魚さんや人魚達がやって来て席に座って行く。私はフランダーと一緒にはじの席に座る。 すると辺りが暗くなり、ファンファーレと共にシャンデリアが光りながら降りてくる。目の前のステージにはタツノオトシゴの「シーホースヘラルド」が立っていた。
「トリトン国王陛下のお出ましですぞー!」
その掛け声と共にトリトン王が私の向かい側の席に座っていた。
「ようこそ、海の皆さん。この王宮のコンサートホールへ!」
その声と共にトリトン王の持っているトライデントも光り輝き、辺りがパッと明るくなる。
「そして素晴らしい王宮専属の作曲家、ホレイシオ・フェロニアス・イグナシアス・クラスタシアス・セバスチャン!」
紹介とともにセバスチャンが貝殻でできた馬車でやってくる。というか、セバスチャンってそんなに長い名前なんだ。
「これはこれは!身に余る光栄、このコンサート成功間違いなし!国王陛下にもきっとご満足いただけると存じます」
「この演奏を楽しみにしておったぞ、セバスチャン」
「はい!王女様方の歌声も素晴らしい物です」
すると目の前のステージに6人の人魚姫が現れた。そして綺麗な声でセバスチャンの指揮の元歌い出す。
♪海の王さま トリトン 人魚姫は七人
♪アクァータ
♪アンドリーナ
♪アリスタ
♪アティーナ
♪アデーラ
♪アラーナ
「こんにちはみなさん!」
「「「「「こんにちは!」」」」」」
「さあついにアリエルの初デビューだ!」
「アリエル様は一番綺麗な声をお持ちです。でもリハーサルに来ないから困るよ」
セバスチャンは何か呟くが指揮に戻る。それと同時にステージに大きな貝殻がゆっくりと出て来た。おそらくあそこにアリエルがいるのだろう。
♪今日は末っ子の初登場
♪鈴を転がす声です聴いて
♪かわいくてじまんの妹の人魚姫
♪アリ・・・!
そして貝が開く。だがそこには誰もいなかった。みんなその状況にポカーんとなる。セバスチャンはこっそりとその場を離れようとする。
「これはどういう事だ、セバスチャン!」
トリトン王の怒鳴り声が聞こえる。
「ご存知の通りアリエル様の頭の中はいつも雲の上 、ちっとも海の底にいてくれないのです。」
「またか!アリエル!アリエル!」
トリトンが怒ったのは建物が揺れた感じがするほど怖かった。そしてあたりは暗くなる。
すると真っ暗な中歌声が聞こえてくる。まるで鈴を転がすような声だ。この声は、
♪よく見て 素敵ね これでもっと完璧
♪なんでも持ってる 私はすべて
♪なんに使うのかも 知らないの 名前も
♪ねぇ これ欲しい? 20個もあるの
♪だけど 足りない なにか
「パパ!」
アリエルはトリトン王が座ってこちらを見ているのに気づく。
「あ!いけない!コンサートは今日だったかしら?」
「その通りだ!アリエル、お前の姉さん達そして私にとってとても大切なコンサートだ。」
「パパごめんなさい。でも私はみんなに私の歌を聞いてもらいたの。だから私は、その、寂しくて、」
「分かっているよアリエル。だから今日はこの海から沢山のお客さんを招いたのだ!」
「パパ、本当?」
「見てご覧、沢山の友達がお前に会えることを楽しみにしているのだ」
アリエルは周りを見ると笑顔が溢れ出る。
「こんにちは、ハロー」
アリエルは観客席を回りながら挨拶をしていく。
「みんなには夢はある?私にはあるわ!」
♪人間の住む国で 見たいな 素敵なダンス
♪そして歩く なんて言った? あ…足
♪歩いて 走って 日の光あびながら
♪自由に 人間の世界で
アリエルは優雅に泳ぎ歌う。心が洗われていく気持ちだ。
♪いつの日か 陸の世界の 果てまでも行きたい
♪人間の世界へ
私達は立ち上がって拍手を送る。
「ブラボーアリエル!素晴らしいよ!どうです?待った甲斐がありましたよね」
セバスチャンが入ってきて拍手をする。
「あかり!それにフランダーも来てくれたのね!」
アリエルが私達に気づき声をかける。
「ブラボー!アリエル!とっても素敵な歌だったよ。」
私は拍手したながらアリエルに言葉を送る。
「ありがとう、あかり!」
私はなんだか嬉しくなる。
「それでは、コンサートを続けますよ!」
セバスチャンの合図とともにオーケストラが演奏しているよな音楽が聞こえ始め、それに合わせてアリエルが歌い始める。
♪愛は空よりも高くそして
♪海よりも深いもの
♪祈りより静かな声
♪愛で歌おう喜びを
♪歌おうあなたのこと
♪歌おう世界に知らせたい
♪歌おう命の限り
「さあ、あかり一緒に盛り上がりましょう」
私はアリエルの声にうっとりと聞き惚れているとアリエルが私の手を引いて私をステージへと連れて行く。フランダーもそれを追ってくる。えー!これ前にもなかった!?
「大丈夫、ノリに任せて。さあ、皆さんもリズムにあわせて手拍子!」
セバスチャンは指揮を続ける。それと同時に会場からはリズムに合わせて沢山の手拍子?が聞こえてくる。アリエルもみんなと一緒に手拍子をするので、私も負けじと手拍子をする。
パン、パン、パパパン!パン、パン、パン、パン、パン
手拍子を続けているといつのまにか楽しくなってくる。そしてアリエルは歌を歌い続ける。私も釣られて歌う。
♪歌おう喜びを
♪歌おうあなたのこと
♪歌おう世界に知らせたい
♪歌おう命の限り
曲が終わると会場から拍手が起こる。それと同時にトリトン王が上の席から拍手を送る。
「パパ!素晴らしいわ!このコンサートで私の家族やみんなが一つになれるわ!」
「ハハハハ!今度からはその家族の事をもう少し考えてから行動してくれよ」
「もちろんよ!パパ大好きよ」
感動の親子の瞬間だ。私は涙が目にあふれてきそうだ。
「おー!成功して本当に良かった。このコンサート我ながらグッドアイデアであったな!」
セバスチャンが得意げに何やら呟いている。
「何!?お前のアイデアだというのか!?」
「いえ、陛下のアイデアでございます。」
「さあ!グランドフィナーレはこの海すべてに捧げようではないか!」
「御意のままに国王陛下!さああかり君はこれを使って!自分のいいと思うところで叩いてね!」
私はセバスチャンに貝で出来たカスタネットが渡された。
「それ、あかりがこの前アトランティカに来て使ったカスタネットだよ」
フランダーに言われ、思い出した。そういえばあの時もこんな感じのコンサートがあったっけ。
そして音楽が始まる。ノリノリのテンポのいいリズムだ。そしてセバスチャンは歌い出す。
♪隣の海草は 青く見えるさ
♪陸に行くのは 大きな間違い
♪周りを見てごらん この海の底
♪なんて素敵な世界だ これ以上何を望む
♪素晴らしい アンダー・ザ・シー
♪ダーリン私の言う事信じて
♪あっちじゃ働くだけ 朝から晩まで
♪こっちじゃずっと遊んでラッキー
♪アンダー・ザ・シー
私はカスタネットをリズムよく叩く。それにつられてお客さんも手拍子をする。
♪歌おう命の限り 歌おう
カタンカタタン!
カスタネットを叩きながら私は歌い踊り出す。
♪あっちじゃフルート こっちじゃハープ
♪あのベースラインは決まってる
♪ブラスもナイス ドラムもグー
♪スウィングのリズム
♪やれば出来るのさホラ、リズムに乗って歌おう
♪難しい事はぬき イキに決めよう
♪動かせ ヒレと足両方 笑顔溢れ
♪アンダー・ザ・シー
♪アンダー・ザ・シー
♪明るいビギンのリズム私ため
♪人間には砂サンド
♪皆にはイキなジャズバンド
♪イキなジャズマン いつもセッション 素晴らしい!
♪可愛いダンサーフリル揺れて素晴らしい
♪ワイルドに決めてハッピー
♪だから最高!海の底!
♪ここは最高!海の暮らしアンダー・ザ・シー!
私はカスタネットを叩き、歌を歌い、踊って息が上がっていた。お客さんはみんな拍手喝采!
パチパチパチパチ
拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
コンサートが終わり私はフランダーと一緒にアリエルの元へ行く。
「アリエル、お疲れ様!」
「あかり!あなたもとても素晴らしい演奏だったわ!」
アリエルにそう言われてなんだかとても嬉しい気持ちになる。
「ねえあかり、今日のコンサートも良かったけど、いつか人間のみんなにも聞いてもらいたの」
「でもアリエル、トリトン王が許さないと思うよ」
「大丈夫、いつかきっとパパも分かってくれるわ。人間だって良い生き物だって!」
その時私はいつかトリトン王の気持ちが変わるといいなと思った。ちなみにコンサートで使ったカスタネットは記念にとくれた。
コンサートが終わりアトランティカから戻った私は、グーフィーの家に向かう。グーフィーの家に着くとグーフィーは家の畑で農作業をおこなっていた。
「あれ?グーフィー、もう片付けは終わったの?」
「アヒョ!あかり。うん。大体片付いたから、今は畑の作物たちを収穫してるんだ」
「そっか、無事に終わってよかったね」
「うん!それからもうすぐコメの実ができるから」
そう言いグーフィーが指差す方向には稲が植えてあり、それは太陽の光を浴びて金色に光っていた。
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