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瑞稀と少しでも長くいるために、タクシーを使って、SAKURAパークに向かうことにした。お金がかかることに躊躇した瑞稀は、電車で行くことを提案したのだが。
「日曜日のパーク内はあの夜のように、乗り物にはスムーズに乗れない。待ち時間があることを考えると、タクシーで行くほうがたくさん楽しめるよ」
これで納得しなかった場合を想定し、卑猥系なことを言って無理やりにでもタクシーを使わせようとしたのに、瑞稀は俺の顔を白い目で見つめた。
「わかりました。マサさんの言うことに、素直に従います。あとが怖いんで」
なぁんて冷たく言い放ち、お昼ご飯の入ったリュックを背負って、さっさとひとりで家を出て行った。
(――もしや俺の顔に、なにか出ていたのだろうか? 絶対に思考を先読みされた!)
両手で頬を撫でてから、慌てて瑞稀を追いかける。そしてふたり並んですぐ傍にある駅前に行き、タクシー乗り場からSAKURAパークに向かった。
「マサさん、込み合っているであろうSAKURAパークの乗り物を、うまく攻略する方法を知ってますよね?」
タクシーが走り出したあとに、楽しそうな感じで訊ねられた。
「残念ながら、実は知らないんだよ。仕事で行くことはあれど、乗り物に乗るときは、空いてる時間を従業員に予め教えてもらって、乗っていたんだ。しかも平日ばかり。今日のような日に、遊びに来たことがない」
「そうなんですか、へえぇ……」
なぜか隣で笑いをかみ殺す瑞稀を、不思議に思って見下ろした。もしや過去に、デートで使っていたんじゃないかと思われていたのだろうか。
「職場にわざわざ、顔を出すようなデートなんてしないよ」
そう言ったら瑞稀はハッとした面持ちで顔をあげて、俺を凝視する。
「ごめんなさい……」
「謝らないでくれ。たまにはお忍びでチェックできるのも、いいかもしれないね」
「それだと、普段している仕事みたいな感じになってしまうんじゃ」
「瑞稀と一緒だから、そうはならない。きっと乗り物の待ち時間も、楽しくて仕方なくなるかもね。それに――」
断言した俺は、瑞稀の膝の上に置かれているリュックに触れる。
「一緒に作ったお昼ご飯を食べるのも、結構楽しみなんだ。いつもは、ひとりきりだから」
「マサさん、たくさん楽しみましょうね」
リュックに触れている手に、瑞稀の手がふんわりと重ねられた。たったそれだけのことなのに、胸がドキドキして、痛いくらいにしなる。
(性的な接触じゃない。ただ手の甲に触れられて、瑞稀の笑顔を見ているだけ。こんな些細なことで、しあわせを感じられるなんて、俺は相当彼に惹かれているんだな)
不意にこみ上げるものを見られないようにすべく、慌てて車窓を眺めた。反射したガラスに映る自分の姿が一瞬吸血鬼になったが、すぐに戻る。瑞稀と一緒にいると、感情のコントロールが難しくなるのが厄介だった。