テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

本編とまったく関係ない宮本弟のお話ですが、お楽しみください!

♡♡♡


この日に限って、すっきりした気分で目がぱっちり覚めた。朝ごはんは通勤途中のコンビニで調達するので、身支度を整えるべくスーツに着替え、颯爽と家を飛び出す。


(いつもより時間があるし、コンビニでマンガの立ち読みでもしようかなぁ)


頭上に広がる抜けるような青空を見上げながら、弾んだ足取りで目的地に向かおうと歩いている最中に、名前がわからないピンク色の綺麗な花を、歩道の傍にある空き地で発見した。

それを手折って恋人にプレゼントするには、たった一輪じゃ物足りないだろうと、きょろきょろ辺りを見渡してみる。すると空き地の奥まったところに、白くて丸っこい花がたくさん咲いていた。嬉々として近づいて、白い花の正体を確認する。


「なーんだ。シロツメクサの花じゃないか……」


シロツメクサは、近所にいた女のコが花冠にしていたのを見て知っていた。

がっくりと肩を落としたのも束の間、シロツメクサの花の傍にある、三つ葉のクローバーに目が留まった。


(そうだ。制限時間10分で四つ葉のクローバーを、これでもかとたくさん採ってやろうじゃないか。そしたら江藤さんに褒められるだろ。俺ってば頭いい!)


持っていたカバンを足元に放り捨てるなり、血まなこになって四つ葉のクローバーを探した。時間が限られているから、そりゃあもう必死だった。今日仕事で使うであろう、集中力まで投入する。

その結果、すごいものを見つけてしまった。


「四つ葉のクローバーじゃなく、二つ葉のクローバーを見つけちゃう俺って、マジで天才かも!」


目の前に掲げて感動したけれど、目的を達成していないので、傍にあった三つ葉のクローバーの葉っぱを一枚千切り、見つけていたものと合わせて、無理やり四葉のクローバーを作った。

それをスマホで撮影するなり、愛しい恋人に送信する。


『江藤さんがたくさん幸せになりますように』


なぁんていう言葉を、一緒につけてあげるのも忘れない。返信がなかったのはきっと、会社で直接言うためだろうと、自分なりに解釈した。

立ち上がりながら、偽造した四つ葉のクローバーを眺めてみる。


「まるで、江藤さんと俺が合体したみたい。ふたつの茎が仲良く絡んでる感じが、なんとも言えない♡」


江藤と過ごした夜を思い出し、欲しくなりかけた気持ちを振り払うように、まったく別なことを考えてみる。四つ葉のクローバーの意味が『幸福』なら、二つ葉のクローバーはなんだろうと、スマホでさくさくっと調べた。


(『素敵な出会い』『平和』『調和』か。この中にある素敵な出会いなんて、俺と江藤さんのことみたいだ)


朝から合体などという、ちょっぴり卑猥なことを口走った、ハッピーな気分の宮本佑輝は、会社で渋い表情の江藤と顔を突き合わせた。

自分が思い描いていた笑顔じゃない江藤の面持ちに、どういうことだよと考える間もなく、無言でチョップを食らった。


「四つ葉のクローバーを粉飾したツケは、仕事で返してもらう。おまえが俺様の目を欺こうなんて、百年早いんだよ!」

「ちょっと待って。珍しい二つ葉のクローバーを見つけた、俺を褒めてくださいっ。だって意味は――」

「……俺様との出逢いが、素敵だとでも言いたいのか?」


(さすがは雑学の帝王。江藤さんってば知っていたのか)


「言いたいです。素敵だと思っちゃ駄目ですか?」


両手の人差し指と親指をもちょもちょ動かしながら告げた宮本を見ながら、江藤は小さなため息をついた。


「口だけは一人前だよな。雅輝にもそういうところがあれば、無駄に悩まずに済むのに」

「兄貴がどうかしたのか?」

「別に。それよりも採取した、二つ葉のクローバーを寄こしやがれ」


宮本は目の前に差し出された江藤の手の上に、スーツのポケットの中に無造作に入れていたそれをのせた。ちょっとだけ萎れた二つ葉のクローバーを、江藤はティッシュペーパーに挟んで丁寧に扱う。


「どうするんですか、それ?」


「おまえが早起きして見つけたものだ。きとんと水分を抜きながら、押し花にしてやる。ちょうどふたつあるんだから、ラミネート加工した完成品をやるよ」

「すみませんがそのうちのひとつは、三つ葉のクローバーの葉っぱを千切ったものなんですけど……」

「いびつな形のクローバーだろ。安心しろ、そっちをおまえにやる」


鼻で笑いながら華麗にあしらい、さっさと踵を返す恋人に文句を言いたいのはやまやまなれど、自らやらかした不正行為を反省すべく、もと三つ葉のクローバーだった完成品を貰うことにした。

しかしながらリベンジに燃えて、四つ葉のクローバーを探し出すきっかけになったことを、江藤は知らなかった。宮本自身も見つけ出すのに一か月もかかるなんて、思いもしなかったのである。


※四つ葉のクローバーが見つかる確率は、100分の1~10万分の1だそうです。その人の体感によりけりですがコツとしては、5月の下旬から6月の上旬に探すことと、模様が入っていない葉っぱの中から探すと、見つかりやすいらしいです。って宮本弟に教えてやればいい感じ?

不器用なふたり この想いをトップスピードにのせて

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

45

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚