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⚠️光が死んだ夏・ヒカル・よしき・感動(?)
第一章 光と影のように
夏の午後。
アスファルトの照り返しが靴底からじりじりと伝わってくる。部活を終えた帰り道、ヒカルとよしきはいつも通り並んで歩いていた。
「今日マジ暑すぎ。溶けるわ」
ヒカルは制服の第一ボタンを外しながら、笑うように言った。
「汗でシャツ張り付いてるじゃん。お前んとこだけ透けてる」
「は? 見んな変態」
「見たくなくても目に入るわ」
ふざけ合いながらも、よしきは視線を逸らせなかった。
太陽に照らされた横顔。少し色づいた頬。額からこめかみに伝う汗のしずく。
何度も「ただの親友」と言い聞かせてきたけれど、胸の奥で高鳴る鼓動は嘘をつけなかった。
途中の自販機で二人は足を止める。
ヒカルが買ったのはオレンジジュース。よしきはスポーツドリンク。
「一口ちょうだい」
ヒカルが当然のようにボトルを差し出した。
「お前、自分で買えよ」
「ケチ。……ほら、俺のもやるから」
そう言って押し付けられたオレンジジュースを受け取る。
キャップを開け、口をつけた瞬間、妙に胸がざわついた。
ヒカルの唇が触れた場所に、自分の唇が重なったから。
当たり前の仕草。友達同士ならなんでもない。けれど、よしきにとっては息が詰まるほどの瞬間だった。
「……なに、変な顔してんの?」
「してねえよ」
「怪しいな」
ヒカルがニヤリと笑う。その無邪気さが、よしきには残酷だった。
しばらく歩いたのち、ふいにヒカルが口を開く。
「なあ、よしき」
「ん?」
「俺らってさ……どこまで一緒にいけると思う?」
よしきは足を止めた。
聞き慣れない響きに胸がざわつく。
「どこまでって、なんだよ」
「別に。……高校卒業して、大学とか仕事とか、それぞれ違う道行くじゃん。そうなっても、俺ら一緒にいられんのかなって」
ヒカルは空を仰ぎ、まぶしそうに目を細めた。
蝉の声が大合唱のように響く中、よしきの胸には重たい沈黙が落ちた。
――ずっと一緒にいたい。
本当はそう叫びたかった。
けれど、それは「親友」としての言葉じゃない。
もし間違って伝わったら、今ある関係すら壊れてしまう。
よしきは笑って、肩を叩いた。
「当たり前だろ。俺らが別れるわけないじゃん」
「……そうか」
ヒカルは短く答え、どこか安心したように笑った。
その笑顔を見て、よしきは胸の奥を押さえた。
伝えられない気持ちが、またひとつ増えた。
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