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「俺は泣けなくなっちゃったけどね。」
なんて、自嘲気味に笑った彼。
「ここだ!ここのラーメンがうまいんだよ!」
嬉しそうに目を輝かせて、暖簾をくぐる。
「もう仁ちゃん遅いって、 」
「ごめんごめん。ちょっと気になる子がいて」
「その子?」
「そーそー。そう言えば名前聞いてねぇや。」
「もぉ~、しっかりしてよ。」
「名前は?」
「…犬飼陽菜です、。」
「陽菜ちゃんね。」
他人に名前を呼ばれるなんて久しぶりで懐かしくて、心がぽっとあたたかくなった。
「で?親御さんは?連絡した?」
「まだですね、。」
「じゃあ今しちゃったら?」
「あ、。充電切れてたの忘れてました、。」
「まぁ??」
「あ、俺モバ充持ってるよ。使いな?」
「、すみません、ほんと、。」
注文して、届くのを待っている途中、仁ちゃんと呼ばれた彼は私と出会った経緯について、簡潔にまとめて説明した。
「…お名前、…伺ってもいいですか、。」
「ん!名乗ってないか!」
お水を飲んでいた彼が、私の方に顔を向けた。
「俺山中柔太朗。」
「俺は吉田仁人。」
「…柔太朗さんと吉田さん、…。了解です。」
「お、来た来た。」
「どお?うまいっしょ?」
得意気な表情で私の顔を見る。
「っ、…おいしいです、。」
「ん、ゆっくり食べな?全然待つから。」
「ごちそうさまでした、。」
「おし、食べたね?じゃー今日は俺が奢る。」
「ん、ありがと。」
「ありがとうございます、。」
お会計を済ませる頃には充電も少しは入っててモバイルバッテリーを柔太朗さんに返却する。
《友だちの家に泊まるから》
母にLINEを送っても既読はつかない。
どうせ
今日も父と兄に手を焼いているのだろう。
「ほんとに友だちいるの?」
「ぇ…?」
別れ際、柔太朗さんに痛いところをつかれた。
「まぁそうね?それは思うよね。」
「こんな時間に公園なんて行かないでしょ。」
「友だちいるならね?」
「…いない、…ですね、…。」
「あはは!やっぱいないんだ?」
「っ、…笑わないでもらっても、?」
「しゃーない!うちに泊まれ。」
半強制的に吉田さんの家に連れ込まれた。
「私、そーゆーこと、…出来ないですよ、?」
「はぁ?何言ってんの?俺手ぇ出さねぇよ?」
「!!」
「え、期待してた?」
「は、自惚れんな。吐き気する。」
「ふっ、口悪いね~君。」
私をからかうように笑って、洗面所そっちね、とだけ伝えて中に消えていった。
手を洗って吉田さんが入っていった部屋に向かえば、いかにもな作業部屋。
「あのさぁ?服、テキトーなのでいい?」
「大丈夫です、。」
「下着は流石にないけど、。」
「風呂沸かしてくるからテレビでも見とく?」
「あ、リモコンそれね。」
電源と書かれた赤いボタンを押せば、テレビがついてニュースが流れ始める。
自室にテレビがないから、久しぶりにテレビを見た。
「なんか面白いニュースあった?」
「いや、…虐待ってなんだろうって、。 」
ぼーっと見ていたら、いつの間にか児童虐待についての特集が始まって、考えていることそのままの疑問を吉田さんにこぼした。