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いつも考えること。
どこからどこまでが虐待か。
「私、…父に襲われたことがあって…。」
「えぇ??」
「…母親と間違われちゃって、…。」
「だから?」
「そうです、。」
「そりゃメンズの家来るの怖いわな~。」
やっぱり吉田さんは優しくて。
「もしさぁ?もし仮によ?」
「それ虐待だよって言われたらどう思う?」
「…別に私、酷く殴られてないし、。」
「でもね陽菜?…DVを見聞きさせるのも虐待に入るんだって。ほら、ね?心理的虐待。」
父の酒癖の悪さがどうしようもできないことくらい、幼い自分でもわかっていた。
些細なことをきっかけに、母にラーメンを投げつけようとしたり、プラスチックコップを投げて、母に怪我を負わせたり、逃げるのが一番だって思っていた。
でも母は、自分が親のいない苦労を知っているからと、父から離れようとしなかった。
私はそんな母が嫌いだ。
「ん、大丈夫大丈夫。いっぱい泣きな?」
「やだよね、殴られてるとこ見るの。」
「ツラかったね。苦しかったね。よしよし、」
涙が止まらなくなった私の背中を擦ったり頭をぽんぽんしたり、私が落ち着くのを待ってくれている。久しぶりに人の優しさに触れた。
「落ち着いたね?じゃー風呂入って来い。」
荒れて帰ってくる父に怯えなくていいお風呂。温かくて、なんだかいい気分。疲れが取れた気がする。
「お風呂ありがとうございました、。」
「ゆっくりできた?」
「できました。」
「よかったよかった。ドライヤーしてあげる」
1年前に裾を揃えて以来、ずっと伸ばしっぱの乾かしにく髪の毛を、丁寧に乾かしてくれた。
「じゃー俺、風呂入るわ。」
先に寝ててもいいよとだけ残して、お風呂場へと消えていった。
別に眠たくないしなーなんて思いながら、今日もHOMEを聴く。
甘えるとか人を頼るとか、全然わからない。
だけどどうしてか吉田さんの温もりを求めてしまう。
少し暗めの照明。アロマの香りが、どこからか漂ってくる。落ち着いた雰囲気に、心がより和らいでいくのが自分でもわかった。
いつの間にか寝てしまっていて、ドライヤーの音で飛び起きた。
心臓がドキドキして、呼吸が少し乱れる。
「うるせぇーなぁー!ドライヤー使うな!」
幻聴。これは幻聴。違う。彼は吉田さん。
「おい!ドライヤー止めろっつてんだろ!! 」
父じゃない。吉田さん。怖くない。
ドライヤーごときで
寝てしまったごときで
怒鳴り散らすような人じゃない。
人を殴るような人じゃない。
「あ、起きた?って、どうしたの?!」
「寝てしまっていてごめっ、なさ、」
「ちょっといっかい深呼吸しよ。」
大丈夫だよーって、背中を上下する吉田さんの手。
「ごめんね?起こすべきだったね。」
「いやっ、…すみません、。」
「ベッド使っていいよ。ゆっくり休んでね。」
吉田さんの言葉に甘えて、吉田さんのにおいがするベッドに潜り込む。
「…どうして私なんかに
優しくしてくださるんですか、?」
「う~ん、なんで、…。なんでだろう…。」
「…なんだか放っておけなくて、。」
「消えたいって顔してた。…からかな。」
「…寝るまでいてほしいって言ったら、?」
「余裕でいてあげる。」
「…いてほしい、…かもです、。」
「ふははっ!なんだそれ。」
はい、俺ここいるからねって、優しく握られた手。大好きだった母を思い出す。
「きょうだいは?」
「…スナック通いの兄がひとり、。」
「どんな人?」
「…私の部屋で彼女とセックスするようなヤツですね、。 」
「うっわひっど~。なにそれ。」
「で、そのゴミをそのまま放置していくようなヤツです。」
ゴミぐらいちゃんと捨てろっての!クズ!って毒づけば、あはは!言ってやれ言ってやれって、吉田さんが笑った。