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『鉄檻の肉、痛みの声』サイト-16の地下深く、冷たいコンクリートで覆われた第3-A貯蔵バンカー。研究員のアイは、完全に遮音された分厚い防護ガラスの前に立ち、暗闇の中に佇む「それ」を観察していた。そこに立っていたのは、身長2.5メートル、体重200キログラムを超える、歪な形をした巨大な人型の怪物(SCP-203)だった。一見するとロボットのようだが、その表面を覆っているのは、青白く変色した本物の「人間の皮膚」だ。本来の骨格はすべて取り除かれ、代わりに一回りも大きな鋳鉄製の機械的な骨組みが内側に強引に埋め込まれている。そのせいで皮膚は限界まで引き伸ばされ、あちこちがズタズタに裂けて、中から赤黒い肉と錆びついた金属のパーツが剥き出しになっていた。「SCP-203、現在のバイタルは安定。エネルギー細胞の充電状態を確認」アイが冷淡に記録をつける。この怪物の口元には唇がなく、剥き出しの金属の顎の周りには、1メートルにも及ぶ鋭利なフック状の爪が何本も生えている。目はソケットから飛び出た針によって正面に完全に固定され、光を反射しない濁った瞳がじっと前だけを見つめていた。『……イ……タ……イ……』不意に、彼の口の代わりに取り付けられた金属のスピーカーから、ガガ、ジジジという激しいノイズと共に、掠れた電子音声が響いた。それは、彼がアラビア語の古い訛りで発した、終わりのない苦痛の言葉だった。『壊して……くれ……肉が……錆びる……常に……焼かれているようだ……』彼は自分がなぜこんな姿にされたのか、昔どんな人間だったのかという記憶をすべて失っている。ただ、24時間、1秒の休みもなく、全身の肉を引き裂き続ける金属の骨組みの「激痛」と「不快感」だけをクリアに感じ続けていた。彼にとって唯一の救いは、3日ごとに訪れる、数時間のシステム休止(強制休眠)の時間だけだった。「リクエストは却下されています。鎮痛剤の投与は行えません」アイは感情を殺して答えた。以前、彼の痛みを和らげようと医療班が麻酔を打とうとした際、彼の体内に仕込まれた最悪の防衛システムが作動した。彼の皮膚の隙間から、キィィィィィンという、人間の脳を直接破壊するほどの高周波の金属音が放たれたのだ。その音をまともに浴びた周囲のDクラス職員たちは、一瞬で耳や鼻から血を流し、脳の神経をズタズタに破壊されて即死した。そして最も悍ましいのは、その後に起きたことだ。音が止んだあと、SCP-203は死んだ人間の死体に近づくと、その鋭いフックで死体の肉を裂き、中から「骨」を無理やり引き抜こうとした。彼は本能的に、自分と同じ「鉄の怪物の仲間」を増やそうとする習性を持っていたのだ。『アイ……頼む……ここを開けて……触って……』スピーカーから、懇願するような、呪うような機械の声が響く。彼の長い鉄の指先が、防護ガラスをガリガリと引っ掻き、不快な高い音を立てた。ガラスの表面に、彼の傷口から溢れた赤黒い血と、古びた機械のオイルがべっとりと付着していく。もし、このガラスが破られたら。もし、彼が防衛の音を響かせながらこの基地を彷徨い始めたら。人間は近づくことすらできず、全員が脳を破壊されて倒れ、彼の新しい「骨」の材料として生きたまま解体されることになる。アイはガタガタと震える手で部屋のライトのスイッチを切り、暗闇の中にその悲しい鉄の怪物を閉じ込めた。しかし、バンカーを後にして長い通路を歩いている間も、アイの耳の奥には、ガラスを引っ掻く金属音と、スピーカーから漏れる「イタイ、イタイ」という終わらない悲鳴の残響が、いつまでも冷たくこびりついて離れなかった。
コメント
1件
うわ、これめっちゃエグい…でもすごく引き込まれたわ。SCP-203の「イタイ…」って機械音声が脳裏に焼きつく感じ。元人間だったのに記憶はなくて、痛みだけがリアルに残ってるの、拷問すぎるだろ。アイの冷静な態度の裏で手が震えてたのも見えたし、あの引き剥がせない金属音の残響、めちゃくちゃ情景が浮かんだ。続きが気になる…!