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長い入学式が終わると、次は部活勧誘の時間だ。とは言っても俺の部は普通に活動日だったし、活動場所が奥まったところにあるから1年生も来ないだろうと思っていたけれど。
「今日もみんな幽霊かなー…?」
なんて、少しだけ悲しい気持ちもあるけど1人の日は1人の日で自分だけの時間にできるから、そこも含めて俺はこの部が好きだ。
(何の映画観ようかな、)
本棚に収納していたDVDに手をかけて今日の1枚を選ぶ。せっかくの入学式だから、普段は自分から進んで観ないような映画でもいいかもな…、と考えていると外から声が聞こえた。
「ぶるっく戻ろー?」
「え〜、でもこっちも教室あるよー?」
「空き教室だよ、こっちは流石に部室はないって…多分」
話を聞く限り、きっと校内で迷ってここまで来たのだろう。俺は廊下にいる子に声を掛けることにした。
「どうしたの?学校迷った?…今日入学式だった子、だよね?」
先輩らしい事はあんまり得意じゃないから慣れないことしたな、と思ったところでふわふわ髪が特徴的な子が返事をしてくれた。
「僕たち部活を見て回ってたんですけど、気付いたこっちの方まで来ちゃって…..、」
なるほど。…..確かに思い返すと俺も似たような事をしたことがある気がする。
「なるほどね、…良かったらうちの部覗いてく?」
来ないと思っていた1年生が相手から来てくれた。それは俺たち2.3年生には好都合だった。
「…え、良いんですか、?」
涙ぼくろが特徴的な子が言う。正直顧問が居ないのは痛い所だけど、校内で迷子になった2人を見捨てることも俺には出来ないから
「まぁ、今日は俺一人なんだけどね、w」
一言だけそう付け加えると、ふわふわ髪が特徴的な子は涙ぼくろが特徴的な子に向かって言う。
「僕見てみたい!」
その言葉に賛成するように涙ぼくろが特徴的な子が頷く。
「ん、いいよ」
2人の確認を取って部室に案内する。部屋に入るとすぐに1年生の2人が感嘆を漏らした。どうやら2人も窓から見えるこの桜を気に入ってくれたようだ。
俺は桜を背景にくるりと振り返る。…じゃあ、改めて
「映画鑑賞部へ、ようこそ!」
_________________________
「それじゃあ…、最初に部活説明だけさせてもらってもいいかな」
お互いに学年・クラスと名前、あだ名くらいの簡単な自己紹介をしてから、俺は2人に断りを入れて映鑑部の説明を始める。
映画鑑賞部、通称『映鑑部』は4人の部員全員が2年生で成り立っていること、だけどほとんどが幽霊部員であること、顧問の先生は忙しくて中々顔を出せないこと。
「あとは…..、今年部員がいないと廃部になっちゃうこと、かな」
「廃部、って…」
きんときが言葉を繰り返す。
「うん、まぁ今の説明の上で部が残ることの方が少ないと思うけど…。幽霊の子も来てくれてはいるけど運動部と掛け持ちとなるとやっぱりね、」
「俺もこの部は好きだけど後輩との接点もこれと言ってないし、廃部になるのが翌年なら俺も引退の年だしさ、正直丁度いいかなって」
そこまで言うと唐突にぶるーくが声を上げた。
「じゃあ、はい!僕この部に入部します!先輩も話しやすいし、何よりこの場所気に入ったし!!」
「ね、きんさんは?」
「…うん、俺もこの場所好きだし、…..映画はあんまり詳しくないけど、これから知っていけたらなって」
その言葉に嘘はなくて2人が入部してくれる事を素直に喜んでいる俺が居たのも事実だった。
「ほんと?…じゃあまた明日!明日でいいから入部届け書いて持ってきてくれると助かる!俺も顧問の先生連れて来るから!」
かくして、映鑑部は俺と幽霊部員の2年生4人、ぶるーくときんときの1年生2人の新しい体制が組まれた。