テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
12
1,868
1,070
チワワの鋭い牙が、偽三毛猫の喉元に迫ったその瞬間。
「オラァッ! 人の縄張りでガタガタ抜かしてんじゃねえぞ、ドブ犬が!」
上空から降ってきた巨大な「灰色の影」が、チワワの横っ面を容赦なくブチのめしました。凄まじい衝撃音とともに、狂暴なチワワ(ガチで誰だったんだよぉ!)は自販機のゴミ箱へ突っ込み、情けない悲鳴を上げて一目散に逃げ去っていきました。
「ひっ、ヒーーーッ!」
恐怖で硬直する偽三毛猫の前に立っていたのは、全身傷だらけで、右耳がちぎれた巨大なベンガルでした。眼光は鋭く、圧倒的な修羅場のオーラを放っています。
「おい、新入り。無事か?」
地を這うような低い声。彼こそが、この東口路地裏を力で支配する絶対的ボス猫でした。偽三毛猫は恐怖を必死に抑え込み、長年培ったセレブの社交辞令(お辞儀)を繰り出しました。
「た、助かりました。感謝いたします、ベンガル殿。私はマリアーダイア家の……」
「あぁん? 何だその気味の悪いクネクネした動きは、あと俺の名前はジロチョウだ。さっきのドブ犬…あぁチワワはドスっていう輩だ」
ジロチョウ?は深くため息をつき、プリテオの頭を肉球で小突きました。
「お前、あの豪邸から叩き出された三毛だな。中身がどうなってんのか知らねえが、その『お上品ごっこ』はストリートじゃ1秒で命取りだぞ」
「お上品ごっこ……!? 私の完璧なマナーに向かって何たる無礼を!」
プリテオ(中身の方)が怒りで震えたその時、泥だらけの腹が
「グゥゥゥゥゥーーーッ!!」
と、今日一番の爆音を響かせました。ジロチョウはニヤリと鼻で笑いました。
「プライドじゃ腹は膨れねえ。おい、ついて来い。ストリートの『血の掟』を教えてやる」
ジロチョウに連れられてやってきたのは、夜の繁華街の裏手にある居酒屋のゴミ捨て場でした。強烈な油と生ゴミの臭いが鼻を突きます。
「いいか、新入り。これが今日の俺たちのディナーだ」
ジロチョウが前足で器用にゴミ袋を引き裂くと、中から真っ黒に焦げた「焼き鳥の皮(タレ味 濃厚なヤツ)」が転がり出ました。「な……ッ!? 何ですかこの、発がん性物質が凝縮されたような物体は! 私はツバメの巣しか口にしないと決めて……」
「四の五の言わずに食え! 食わなきゃ明日には干からびて死ぬ、それが野良の世界だ!」
ジロチョウの怒号に気圧され、偽三毛猫は涙目を浮かべながら、焦げた焼き鳥の皮を恐る恐る口に運びました。(……う、嘘でしょう。私はマリアーダイア家の至宝、プリテオ……こんなゴミを……)絶望しながら一口、咀嚼したその瞬間。脳内に、ストリートの爆音ロックが鳴り響きました。(な、何だこの……っ!? 暴力的なまでの過剰な塩分! 脳の髄まで痺れるジャンクな甘みのタレ! そして、噛めば噛むほど溢れ出る濃厚な鶏の脂は……っ!!!)これまで素材の味(無味無臭)を極限まで活かした高級フレンチ風キャットフードしか知らなかったプリテオにとって、居酒屋の廃棄焼き鳥は「未知の合法麻薬」でした。
「う、美味ぇ…… !美味すぎる! 私は今まで、なんて退屈な離乳食を食べていたんだ! もっとだ、もっとこのジャンクを私の血肉に注ぎ込めぇぇぇ!」
気がつけば、気高きシャム猫の魂を持った三毛猫は、泥にまみれながら狂ったようにゴミ袋に頭を突っ込み、焼き鳥の骨までバリバリと貪り尽くしていました。プロのビジネスキャット、ストリートに降り立ってわずか数時間で、完全にジャンクフードの奴隷へと堕落したのです。
「ハハハ! いい食いっぷりだ!」
ジロチョウは満足そうにプリテオの背中を叩きました。
「気に入ったぞ新入り。だが、タダ飯はここまでだ。次は、ストリートで生き残るための最初の試練を課す」
ジロチョウが鋭い爪をシャキッと突き出しました。
「あそこの暗がりに、まるまると太ったドブネズミがいるだろ? 自分の力で、あれを狩ってこい。それができなきゃ、お前をこの縄張りから叩き出す」
暗闇の向こうで、赤く光る小さな眼光が偽三毛猫を睨みつけています。お腹は満たされたものの、中身は温室育ちのセレブ猫。実戦経験はゼロです。外の世界で「野生の戦闘狂」への覚醒を迫られる本物のプリテオ(中身)。一方、豪邸の中では、偽プリテオ(中身・三毛猫)がベッドの上で高級マッサージを受けながら、優雅にテレビを見ていました。二匹の格差はさらに広がりながら、プリテオの過酷すぎる命懸けの戦いが幕を開けてしまった……
コメント
1件
あら、第4話、読み終わりました!もうジロチョウの登場がカッコよすぎて、思わず声が出ちゃいましたよ。あの「ドブ犬が!」って啖呵、たまりませんね。そして何より、あの高級フレンチキャットフードしか知らなかったプリテオが、焦げた焼き鳥の皮を「合法麻薬」って言いながら夢中で食べるシーン、思わず笑っちゃいました。お上品な魂がストリートの洗礼を受けてどんどん堕落していく様子が愛おしいです。でも試練のネズミ狩り…次がすごく気になります!