テラーノベル
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夜も更け、街は静けさに包まれていた。
寝ようとしても、どうしても眠れない。
若井の頭の中に浮かんでくるのは、昼間に元貴と一緒に買ったお揃いのブレスレットのことだった。
──元貴は、本当に俺のこと好きなんだろうか?
からかってばかりで、肝心なことは一度も言ってくれない。
自分はもう気持ちを伝えてしまったのに。
それが不安で、けれど期待もあって、胸がざわざわする。
若井は布団の上でしばらく悶々としていたが、やがてスマホを手に取るとためらいながらも発信ボタンを押した。
「……ん? 何、こんな時間に」
数コールで繋がった画面の向こう、ベッドに寝転びながら髪をくしゃくしゃにした元貴が映る。
「悪い、起こした?」
「んー、寝てなかったから大丈夫。どしたの?」
少し間を置いて、若井は意を決して口を開いた。
「……元貴、俺のこと好き?」
元貴の目がまん丸になる。
そして、ふっと唇を歪めて笑った。
「ははっ、急にどうしたの。……さぁ、どうだろうねぇ」
軽く言い放つその声が、若井の心臓をさらにざわつかせる。
「……冗談じゃなくて、本気で聞いてんだよ」
「へぇ。本気で聞いてくるんだ」
元貴は肘をつき、頬杖をしながらカメラに顔を寄せる。
「じゃあ逆に聞くけどさ、若井は? 俺のこと好き?」
「それは……言っただろ、前に」
「答えになってない」
挑発的に笑う元貴。
若井は言葉に詰まり、頬がじんわり赤くなる。
「……好きだよ。……ずっと」
「ふーん。じゃあ俺も“かもね”」
「かもって何だよ!」
思わず声を荒げる若井に、元貴はクスクス笑いを漏らす。
「そんなに俺に言わせたいの?」
「……当たり前だろ。言葉で聞きたいんだよ」
その真剣な響きに、元貴の笑みが一瞬止まる。
けれどすぐに小悪魔みたいな顔に戻り、さらに焦らす。
「どうしよっかなぁ。言ったら満足して、俺、放っとかれるかも」
「放っとくわけないだろ!」
声が裏返りそうになって、自分で恥ずかしくなる。
画面越しに見ているのに、こんなに動揺しているのが丸わかりだ。
「……かわいいな、若井」
「っ、言うなよ……!」
布団の中で体を丸めながら、スマホを握る手に汗がにじむ。
しばらくからかうように笑っていた元貴だったが、やがてふっと真剣な表情を浮かべた。
「……好きだよ。」
その小さな囁きが、胸に突き刺さる。
言葉が出ない。
涙がこみ上げ、視界がじんわり滲んでいく。
「……やっと言ったな」
かすれた声で返すと、元貴は照れ隠しのように笑った。
「ほら、最後まで言っただろ。……今度は若井の番」
深呼吸をひとつして、若井も真っ直ぐに言う。
「……元貴、俺も好き。大好きだよ。」
画面越しに、お互いが照れたように笑い合う。
お揃いのブレスレットを無意識に指で撫でながら、心臓がやっと落ち着いていくのを感じた。
その夜は、ふたりにとって “確かめ合う” 夜になった。
コメント
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大森くんお誕生日おめでとう!!モテ期終わっちゃったね〜 かなしいね( ´・ω・` )