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「なあ悠真、おまえもそろそろ彼女つくれよな」
亮の声が、わざと大きく響いた。
「は? そういうのいいから」
悠真は苦笑しながら手を振って流す。
軽いやり取り。
それだけなのに、咲の胸はぎゅっと締めつけられる。
――やっぱり、いないのかな。
でも、いたら……。
布巾を握る手に力がこもる。
聞きたいのに、聞けない。
ただの兄友だから、口をはさむ権利なんてない。
リビングに響く兄の笑い声の中で、咲の心だけが静かに揺れ続けていた。