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#ワンナイトラブ
篠原愛紀
コメント
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貴族にはプライバシーがないイメージ。 庶民でよかった!(爆)
「わ、私……部屋に戻らないと……っ」
けれど、身じろぎしたと同時、下腹部と腰へ走った疼痛に小さく息を呑んで動きを止める。
痛みに眉根を寄せてうずくまったその細い身体を、ランディリックが逃がさないよう抱き留めた。
「辛いんだろう? 無理に動かなくていい」
「で、でも……っ」
「ナディエルのことが気になるかい?」
静かな問いかけに、リリアンナが思わず彼を見遣ると、ランディリックは落ち着き払ったまま、腕の中へ閉じ込めたリリアンナの髪を、ゆっくりと撫でる。
「心配はいらない」
「っ……でも……!」
あの部屋を見られたら……。
昨夜、自分に何があったのか、一目で分かってしまう。
羞恥で泣きそうになるリリアンナへ、ランディリックが穏やかに告げた。
「セドリックは、昨夜僕がヴァルム要塞から戻ってすぐ、キミの部屋を訪ったことを知っている」
「……え……?」
「そのまま朝が来たことを思えば、多くを説明する必要もないし、隠すだけ意味がないと思わないかい?」
淡々とした声音だった。
「セドリックが知っているということは、当然侍女頭のブリジットにも伝わるということだ。そうなれば必然的に――」
リリアンナの顔から、一気に血の気が引く。
(ナディも、知って……)
執事であるセドリックから侍女頭ブリジットへ。そこからランディリックやリリアンナに接する必要のある使用人たちには周知されると、容易に推察できた。
良くも悪くもヴァン・エルダール城は侍従同士の連携がしっかり取れている。
(もしかしたら料理人たちまで――?)
彼らにはランディリックやリリアンナの食事の手配をする必要がある。
リリアンナにとって、あのようなことは初めての経験だった。
もしかしたら今日は、まともに歩くことすら出来ないかもしれない。食堂へ出向けない可能性もあると思えば、ベッドでも食べやすいメニューに切り替える必要があるだろう。
婚姻も済ませていない自分が、そんなふうになるなんて思ってもみなかったし、淑女としてとても褒められたことではないけれど、この城の人たちがランディリックの決定に、一も二もなく従うこともまた確かなのだ。
昨夜、自分がランディリックに抱かれたことは、もはや隠しようのない事実で、恐らくそのことは城の皆にとって、城主が選んだ必然として捉えられているのだ。
「うそっ……」
羞恥に耐え切れず、リリアンナは震える指でシーツを掴む。
そんな彼女を、ランディリックは静かに抱き寄せた。
「これは僕が望んだことだ。――婚前交渉を持ったからといって、誰もキミを責めたりしないし、堂々としていればいい」
「……でも……っ」
「安心しなさい。ナディエルにも、余計な詮索はさせない」
穏やかな声だった。
けれどそれは、既に全て手配済みだと言われているのと同じだった。
逃げ道など最初からないのだと、静かに突きつけられる。
「キミはもう、何も気に病むことなく、僕の妻になればいい」
優しく耳元へ落とされる声音。
まるで守るように。
まるで閉じ込めるように。
ランディリックの静かな声音に、リリアンナはギュッと唇を噛み締める。
拒まなければならないはずなのに、ランディリックの腕の中は、ひどく温かかった。