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僕は母親が居ないんだ。

僕を産んだときに出血多量で死んじゃったんだって。

父親は母親を失ったショックで自暴自棄になって、僕に虐待とかしてたらしいよ。

他人事みたいって、そりゃそうでしょ。すごいちっちゃい頃の話だし。

だから施設に引き取られて育ったんだ。

でも、どうにも笑わないし、何だか他の子と違うって、施設の先生たちが心配してたんだよ。

それで病院に行ったら、虐待がトラウマになって「失感情症」とやらになっちゃったみたいなんだよね。

要は、感情がなくなっちゃったってこと。

暑いとか痛いとか、そういう客観性のある感情はわかるよ。

でも、痛いから怖いとか、もうそれに近づかないとか、そういうのが異常に少ないだけ。

施設の先生たちはそんな僕を放って置かなかった。

感情を覚えさせようとカードを作ったり、場面に合わせたリアクションを取れるようゲームをしたりね。

それでも僕は治らなかったから、中学生になったら先生たちも諦めたみたいでさ。

ただ、ある程度の受け答えはできるようになったし、完全に役に立たなかったわけでは無いよ。

でも、僕はそのままじゃいけなかったみたい。


「皆、来てくれてありがとうね。あの子も喜んでいると思うわ。」

今日は彼の葬式の日でした。

お焼香やら何やらを済ませた後、大きなオーブントースターのような機械に、彼を乗せた棺は入っていきました。

クラスメイトの女子達が、後ろの方にかたまって泣いていました。

(何が悲しくてそんなに泣くんだろうな。あの子達、いつも悪口言ってた気がするけど。)

優希は、泣くことで仲間意識を深めているんだと言いました。

「俺は彼奴のこと、そんな小道具にしてほしくないんだけどな。」

「へえ。じゃああの子達の涙は、優希のとは違うんだね。」

「うるせえ、この人でなし。」

優希も、感情を隠すために悪態をつくのが癖でした。

二人で外に抜け出して焼けるのを待っていると、上空に雲がぷかぷかと浮かんでいました。

「俺、彼奴のこと何にも分かってなかったんだろうな。……話してくれればよかったのに。」

また彼の目から、涙が溢れてきました。

「くそっ。俺達親友だっただろうがっ……。」

『俺達』ってそれは僕は入っているの、とはどうにも聞くことが出来ませんでした。

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