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修学旅行の夜、六人部屋ではひっきりなしに会話が続いていました。

「俺さ、宮下好きなんだよね。」

そう打ち明けたのは誰だったか忘れてしまいましたが、そこから空気が変わったことだけ覚えています。

「えー、宮下って彼奴の葬式で泣いてたじゃん。」

「いや、それは女子同士の付き合いだろ。」

「彼奴のおかげで命の授業とかやらされてさ、まじでいい迷惑だったわ。」

いつしか話題は彼の悪口へと移っていきました。

こんな風になると、僕はいつも困ってしまうのです。

何故なら、施設の先生たちは僕達子どもの生きる世界を美化して、悪口なんて注意すれば消えると信じ込んでいるからです。

優しくやめようって言おうね、なんてアドバイスを真に受けて、いじめに巻き込まれたことは幾度となく在りました。

結局は何も感じないので問題はないのですが、トラブルで呼び出されるのは仕事の邪魔でしょう、いつしか悪口は無視するようになりました。

そう過去のことに思考を巡らせておりますと、ぱっと此方へ話を向けて来ました。

「なあ、お前も彼奴と友達ごっこしてるの、大変だっただろ。」

「……僕、何も感じないからわからないや。」

これは僕の本心であり、一番波風が立たない答えでした。

「ははは、確かにな。お前に聞いた俺が馬鹿だったわ。」

そうやって皆がけらけら笑っていますと、バンッと引き戸が開きました。

「お前ら何悪口言ってんだ!」

優希でした。

怒った様子でつかつかと歩みを進めると、何故か僕の胸ぐらを掴みました。

「落ち着いて。外には上手く聞こえていなかったかも知れないが、僕は悪口を言っていない。」

「そういうことじゃ無いんだよ!」

彼は悲しそうな怒っているような、色々な感情がかき混ぜられた顔をしていました。

「悪口を止めるのが、親友としての務めだろうがよ!考えてみろよ、彼奴はもう言い返すことも出来ないんだぞ!悔しいだろ!」

マシンガンのように捲し立て息を切らした後、優希は我に返り僕から手を離しました。

優希は少し体を落ち着け、今度は静かに言いました。

「綺羅の感情のことだって分かってる。けど、俺は綺羅の思いを聞きたいんだ。俺から、親友から逃げないでくれ。」

「……そのことなんだけどさ。」

僕はあの日からずっと聞きたかった疑問を口にしました。

「僕はその親友というものに入っているのかな。」

その途端、優希は狂ったような勢いで僕を床に押し倒しました。

(ああ、僕も普通の感情を持った『人間』なら良かったのに。そうすれば、彼らを心から理解できたのに。)

あまりの衝撃に、僕の意識はそこで途絶えました。

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