第4話 ー 夙 夜 夢 寐 ー
今日も朝がやってきた。俺の嫌いな朝が。
毎日、「貴方と過ごす夜がずっと続けば良いのに」と願っている。
貴方と別れ、家路を歩く。
その時も貴方のことが頭から離れなかった。
貴方と過ごす時間が思い出として鮮明に残っている。
波が動くとき、貴方が名前を呼んでくれるとき、星が輝くとき。
その全てが俺の夜の思い出。
幸せな思い出。
夜より朝や昼の時間の方が多い、そんなどうにもならないことが憎らしかった。
スマホの電源をつけ、メッセージを確認すると、一件。ないこさんから少し長い文章が送られてきた。
「りうらくん、俺と出会ってくれてありがとう。俺の過去を聞いてくれたから分かると思うけど
俺、もうすぐいなくなろうかなって考えてる」
大切な人のために、ないこさんは自分の命を捨てる。
それがどれほど辛いことか貴方が一番分かっているだろう。
「…、今日も夜に海か」
俺は早めに夜ご飯を食べ、準備を済ませた。
ご飯も味がしなくてお腹に溜まった気はしないけれど
食べたことは確かだから、倒れはしない。
貴方から「今日は早めに家出た」というメッセージを受け取り
いつもの海へ足を運んだ。
「ないこさ…、ぇ?あ…れ、いない」
これから此処に集合ね、と言われたはずの場所に貴方がいない。
正直、怖い。心配。
辺りを見回し貴方の姿を探す。
「…っ、」
俺は確かに見た。貴方が海に倒れ込んでいくのを。
「ないこさんっ、」
助けるために、走っていた。助けられないなら一緒に海に倒れ込むために。
口の中に塩が混じった水が流れ込む。
貴方の腕を掴み、引き上げようとするけれど
高校生の俺が成人男性の貴方を引き上げるのには力が足りない気がした。
「…っぅ」
水が染み込み重たくなった貴方の服を精一杯掴み上げる。
もうすぐが今日なんて考えられないけれど。勿論一緒に逝きたくないけれど。
俺は限界を感じた。
夜の海には誰もいない。二人きりで消えられるなら俺は幸せだった。
二日間だけの特別は海に溺れて消えてゆくのだろう。
昔沈んでいった海賊船のように、深海へ。暗い海の底へ。俺と貴方は落ちていった。
第5話 ー 貴 方 と の 物 語 の 続 き ー
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