まだ誰も知らない、この場所で(恋愛)
学校が終わった。何をしようか。
「遥(はる)ちゃん、今、暇してるね?」
…誰?
「僕はねぇ__っと、呼ばれちゃった!!とりあえず来て!」
困惑。だけど向こうも困っていそうだし行くしかない…。
謎の乗り物に乗らされた。今がチャンスか…
「ところで君は何者なの?」
「ふふん、知りたい?」
「うん。自己紹介もしてないのに名前知られているし…」
「怖がらせっちゃったのかも!?ごめんね!」
「いや、それはいいんだけどさ」
「ならよかったよ。僕は…カトだよ」
カト…。加藤みたいだな…
「遥ちゃん、ついたよ。」
ついた先は、想像以上に現実的な世界だった。
「ふんふん、意外と普通でしょ?」
「うん。で、何をすればいいの?」
「とりあえずこれを着て。裸になってからね」
「え…?」
「大丈夫!僕はみんなに遥ちゃんのことを話してくるから、この中で5分くらいで着替えて」
「わ、わかった…」
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「遥ちゃーーん!着替え終わった?」
「うん、サイズもばっちり」
「よかった。じゃあついてきて」
向かった先には、見慣れた顔が一人。
「え、っと…」
「あ…」
「遥ちゃん、知り合い?」
「一応…。」
「?どうしたの?喧嘩でもしてるの?」
「えと、いや、ちがくて…」
どうしよう…。言っていいのかな…?
「元カレです」
っぐ…余裕で言うじゃない…。
「元カレ!!もてるのね~遥ちゃん^^」
うわあん…逃げたい。
「持てるわけじゃなくて、ただ…って、どうでもいいじゃない!で、何すればいいのよ。」
「こわ~い、遥ちゃん!」
「仕方ないでしょう…」
「ははは。まあ、遥ちゃんと唯人くんには、これを作ってもらうよ。じゃ、その紙に書いてある通りに作ってくれたらいいから、僕たちはこれで。」
…ひどすぎる。けど、帰り方もわからないし、やるしかないね。
「遥、とりあえず、これ。」
「どーも。」
「…やっぱり、怒ってる?」
「知らないわ」
「ふーん…」
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「なあ、遥。」
「ん?」
「俺、やっぱ遥が好きだわ…というか、」
バチーーーーン!と、音が響き渡る。が、カトたちには聞こえていない様子。
「いってぇ…」
「ふざけるんじゃないわよ!浮気したのはそっちじゃないの!!」
「…ごめん、逃げられなくって。あの女から…。」
「だから、逃げる逃げるって何よ…。」
私が逃げたいくらい…だけど、カトたちがいるから逃げられない…
「じゃあ、俺の話、最後まで聞いてくれる?」
「…わかった」
「俺、家にいとこが居候しててさ。そいつ、2つ上なんだけど、昔っから俺が恋愛的に好きみたいで。で、その日はたまたま二人で家にいたから、買い物を提案…というか、拉致されたわけよ。それで、腕組まれて出発ってわけ。で、しかも恐ろしいのが結束バンドを見えない位置でやや緩め、しかし抜けないようにつけられて。トイレに行くときは外せたけど位置情報アプリで監視…。逃げたら即ばれだったから、あきらめてた。ってところかな。」
「ふーん…そのいとこは?根拠は?」
「全部、家族は知ってるよ」
「そっか。ちょっと、考えさせて。」
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「やあやあ、遥ちゃんに唯人くん。」
びっくりした。
「話は終わったかい?」
は…はなし?もしかして…?
「僕、ぜーんぶ知ってるんだよね。」
「じゃあ、また10年後に会おうね!」
そうして、私はたちは現実に戻った。
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…うまれた。
全部知っていたということは、カトは、私の子供だったのかな。
「遥!お疲れ様!」
「唯人…ありがとう。双子だって。きっとカトと…」
「俺を連れてきた、サトちゃんだね。」
向かい合って、笑った。