テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ありんす
981
隼人
71
99
ここまでの伏線と現代プレイヤーの熱狂の裏で、当のテウル・エクス(15歳)は実家からの「絶対的な政治的圧力」という名の特大爆弾を叩きつけられていた。学園の放課後、自室で頭を抱えるテウルの元に、実家(エクス子爵家)の父上から届いた一通の手紙。
そこには、父親特有の純粋かつ無邪気な大興奮の文字が躍っていた。
『愛しいテウルへ。学園での大健闘、父は感涙しているぞ!
なんとあのヴァルハイト公爵家(カゼル様)、アルスター侯爵家(シオン様)、さらには王宮保健医のヴェイン様から、相次いで「テウル・エクスを我が家の夜会や研究会に招きたい」との打診があったのだ!
我が子爵家がここまで大貴族の方々から重宝されるとは……!
テウルよ、家門の未来のためにも彼ら攻略対象……あたた、大貴族の皆様方とさらに積極的に、密に交流を深めるのだぞ! 逃げることは許さん! 父より』
手紙を読んだ瞬間、テウルは羊皮紙をビリビリに破り捨てそうになった。
「父上ぇぇぇぇぇッ!! 家門の未来どころか世界の存続がかかってんだよコレ!!」
ただでさえ学園で「大木の下に集合した攻め達+涙目のレイきゅん」という地獄の台風の目に巻き込まれたというのに、実家から「積極的に交際しろ」と背中を蹴っ飛ばされたのだ。
拒否すれば「父の言いつけを守らない不肖の息子」として実家を追い出され、破滅(=ホームレス)する。
従えば「攻め達のドロドロの愛憎劇」の渦中へと自ら飛び込むことになる。
「なんで……? 俺は前世で全108ルート走破した知識を活かして、遠くの屋根から4K画質で彼らの総受け(レイ)ライフを観賞したかっただけのモブ腐男子だぞ……?」
◇
父の命に従い、テウルは涙目(無表情)で「積極的な交流」を開始せざるを得なくなった。
しかし、テウルが動けば動くほど、物語は本来の『ほら滅』のBLルートから急速に狂い始めていく。
① 【騎士団の稽古場】カゼルとの「密な交流」
父の指示で、カゼルの個人的な稽古に「手入れ役・アドバイザー」として同伴したテウル。
そこへ、テウルの後を健気につけてきたレイ(主人公)が登場する。
レイ:「テウル様……! 僕、テウル様がお忙しそうだったから、お弁当を作ってきたんです……っ!」
テウル(心の中):(尊い!! 主人公の手作り弁当イベント! これ本来はカゼルに渡すやつ!!)
カゼル:「あ? 平民のガキ、テウルは今俺の剣の手入れ中だ。手押し差し出すんじゃねえ」
レイ:「ひっ……! 違います、僕はテウル様に……!」
カゼル:「あァ!? テウルはお前みたいなヒョロいガキの相手してるヒマねえんだよ! こいつは俺の『舎弟一号』だぞ!!」
カゼルがレイを威嚇しているように見えるが、カゼルの本心は「テウルの意識が自分から平民のガキに逸れるのが気に入らない」という謎の独占欲。
一方のレイは「テウル様をこの粗暴な男(カゼル)から救い出さなきゃ……!」と、変な使命感に燃え始める。
テウル:「(待って。なんでレイきゅんと攻め(カゼル)が、俺を取り合ってバチバチになってるの??)」
② 【アルスター侯爵家の研究室】シオンとの「密な交流」
続いて、シオンの個人研究室へと訪問させられたテウル。
ここにも「テウル様が怪しい魔導士に拐われたのでは」と心配したレイがこっそり忍び込んでくる。
シオン:「来なさいテウル。君と僕で共同開発している『異空間固定魔法陣』の理論だが……」
レイ: 「テウル様! だめです、その人は危ない実験をしようとしています!」
シオン:「不躾だな平民。……テウル、なぜ君はこの無知なガキを私の聖域に立ち入らせる? 僕と君の二人だけの研究時間だと言ったはずだが」
レイ: 「テウル様を実験台になんてさせません! テウル様は僕の……僕の、大切な人なんです!」
シオン: 「……ほう。君のような有象無象が、僕の『唯一の理解者(テウル)』に軽々しく触れるな」
静かな研究室内で、シオンの魔力が黒く渦巻き、レイの瞳には拒絶の光が宿る。
テウル: 「(シオン様、目を輝かせてレイきゅんを閉じ込める監禁ルートはどこ行った!? なんで俺を巡ってマッドサイエンティストと総受けが牽制し合ってんの!?)」
③ 【夜の屋根の上】魔王(ベルゼ)との「高みの見物……?」
心身ともに疲れ果てたテウルは、癒やしを求めて夜の学園の屋根の上に登った。
そこには、人間観察の同伴者である魔王ベルゼが待っていた。
「ククク……テウルよ、苦労しているな。人間どもの醜い愛憎劇の渦中に放り込まれた気分はどうだ?」
「最悪ですよベルゼ様……。俺はただ、あいつらがレイきゅんを巡って『お前なんかに渡さない!』って言い合う神展開を遠くから双眼鏡で見たかっただけなんです……」
テウルが深いため息をつくと、魔王ベルゼは紫の瞳を怪しく光らせ、テウルの頭に冷たい手をポンと置いた。
「案ずるな。……いざとなれば、我が貴様ごとあの愚かな人間どもを滅ぼしてやろう。貴様だけは我が配下として、永遠にこの木(屋根)の上で高みの見物をさせてやる」
「(それ完全に一番重い【魔王単独エンド】のセリフじゃねーか!!)」
◇
帰宅後。
自室のベッドに突っ伏し、テウルは絶望の叫びをあげた。
「父上のバカあぁぁぁぁぁッ!!」
親父の余計な一言のせいで、「攻め達 vs 総受け主人公」という本来の構造が完全に崩壊。
攻め達(カゼル・シオン・ヴェイン・ベルゼ)は「なぜか自分たちの本質を見抜き、執着させてくるテウル」に嫉妬と独占欲を深め、
総受け主人公(レイ)は「恐怖の男たちから自分を優しく守り、唯一安心させてくれるテウル」を絶対に渡すまいと必死になり、
本来の総受けBLノベルゲーム『掘られすぎて滅』は、
【遠巻き鑑賞希望の悪役令息(テウル)を中心に、全キャラが感情をドロドロにこじらせて激突するカオス愛憎劇】
へと完全に変貌を遂げてしまったのであった。
(誰か……誰でもいいから俺を遠くの木の上に戻してくれえええええええっ!!!)
「テウル……久しいな。私の可愛い、世界でたった一人の弟」
学園の放課後、人通りのない図書室の奥。
突如として空間を歪めて現れたのは、漆黒の髪に氷のような青い瞳を宿した、圧倒的な美貌の青年だった。
胸元に刻まれているのは、エクス家の裏の紋章。
彼の名は――**デウス・エクス(18歳)**。
「デ……デウス兄様……!?」
俺(テウル・エクス)は、前世の腐男子としての全記憶を疾風のごとく駆け巡らせた。
(嘘だろ……!? 『ほら滅』の公式裏設定ファンブックの【設定資料集・袋とじ】にだけ載っていた、**『存在が秘匿された血の繋がらない異母兄』**……デウス・エクス本人じゃねえか!!)
原作ゲームでは名前すら出ず、世界線によっては影からエクス家を操っていたとされる隠し中の隠しキャラクター。
属性は**【冷徹×執着×絶対的狂愛(クールヤンデレ)】**。
デウスは音もなく歩み寄ると、氷のように冷たい指先で俺の顎をすっと持ち上げた。その瞳には、狂気的なまでの深淵な執着が宿っている。
「父上から聞いたぞ。学園で妙な虫ども……王子や騎士のガキ、挙げ句の果てに魔王までが、お前を取り囲んでいるとな」
「あ、いや……あれはただの『ビジネス知人』でして……」
「黙りなさい、テウル」
デウスの低い声が室内の温度を氷点下まで下げる。
「お前は私のものだ。幼い頃、お前が私に『兄様、いつか遠い場所で二人で静かに暮らしましょうね』と言ったのを忘れたわけではあるまい?」
「(言ってない!! 前世の俺はそんな死亡フラグみたいなセリフ一言も言ってない!!)※多分幼少期の『遠くの木の上で高みの見物しよう』がバグって伝わってる!!」
デウスは俺の髪に愛おしそうに触れ、冷ややかに微笑んだ。
「お前を脅かす有象無象(攻めたち)は、私がすべて消してあげる。……さあ、私と一緒に誰も来ない最果ての館へ行きましょう」
◇
その時だった。
「――おい。俺の『舎弟一号』に気安く触ってんじゃねえよ、手折るぞ」
ズン、と重い足音とともに、大剣を担いだ**カゼルが踏み込んできた。その目は血走っており、完全にヤンデレ狂愛のスイッチが入っている。
「僕の『唯一の共同研究者』をどこへ連れて行くつもりだ? 幾何学的に切り刻まれたいのかい」
反対側の影から、黒術式を展開させた**シオン**が冷ややかに冷酷な殺気を放つ。
「テウル様から離れてください……! テウル様は、僕の……僕の唯一の光なんです!!」
物陰から飛び出してきた**レイ(総受け主人公)**が、涙目になりながら俺とデウスの間に割り込み、必死に手を広げて俺を庇おうとする。
さらに窓の外、屋根の上からは**魔王ベルゼ**が「ククク……余の『人間観察の同伴者』を奪おうとはいい度胸だ」と紫の魔力を滾らせて見下ろしていた。
カゼル、シオン、レイ、デウス、そして魔王。
全キャラのクソデカ感情と狂気が狭い図書室に充満し、空間がミシミシと歪み始める。
「……テウル。あの虫どもは、お前にとって一体何なんだ?」
デウスが氷の刀身を顕現させながら、俺に問いかける。
「テウル! 答えろ! 俺とこいつ、どっちのツラが好みだ!」(カゼル)
「テウル、僕を選びなさい。あの男の脳内など見る価値もない」(シオン)
「テウル様……僕を捨てないで……っ」(レイ)
ドロドロの殺気、執着、愛憎、そして独占欲の暴風雨。
その完璧すぎる地獄絵図の真ん中で――。
俺(テウル・エクス、前世・腐男子)の脳内に、突如として稲妻のような旋律(絶望の真理)**が走り抜けた。
(……あれ?)
俺は震える手で己の胸を触り、周囲を取り囲む男たちの顔を一人ずつ見回した。
カゼル:俺を「舎弟」と呼びつつ他人に渡したくなくてブチ切れている。
シオン:俺を「理解者」と呼びつつ監禁・共有を狙っている。
ヴェイン(※不在だがバイト名目で拘束中):俺を「観察対象」として手元に置いている。
ベルゼ:俺を「同伴者」として世界滅亡後も連れて行こうとしている。
デウス(義兄):クールヤンデレ全開で監禁宣告。
レイ(主人公):俺を「絶対的聖域」として執着し、他の男を牽制している。
(……待て待て待て。落ち着け俺。前世の腐男子知識を総動員して、この状況を論理的に構造解析してみろ)
『ほら滅』本来の構造:
【攻め(王子・騎士・魔導士等)】⇒【主人公レイ(総受け)】
現在の実際の構造:
【攻め(カゼル・シオン等)】⇒【テウル】
【隠しラストボス(魔王)】 ⇒【テウル】
【裏隠しキャラ(義兄)】⇒【テウル】
【総受け主人公(レイ)】⇒【テウル】
矢印が。
全方向から、俺(テウル)一人に向かって一直線に突き刺さっている。
「……嘘だろ」
俺は白目を剥きそうになりながら、自分の口元を手で覆った。
「俺……『遠巻きから総受けライフを高みの見物する脇役悪役令息』のポジションにいたはずなのに……今更だけど、俺自身が『この世界の総受け(真のヒロイン)』になってねえか……!!??」
気づいてしまった。
「空気になりたい」「遠くの木の上から鑑賞したい」と必死にモブムーブ(ステルス)をかまし続けた結果、その謎めいた挙動と無自覚な優しさが裏目に出て、登場人物全員の狂愛と執着のベクトルを自分一人の身に集約させてしまっていた**という恐ろしい事実に!!
「テウル、答えろ!」(全員)
「嫌だぁぁぁぁぁぁッ!!」
俺は前世の腐男子としての叫びをあげると、足元に『閃光弾魔法(自作)』を投げつけ、爆煙とともに図書室の窓を突き破って庭の大木(特等席)へと命懸けのダッシュを決めた。
「俺は鑑賞したいだけなんだよ! 抱かれたくも監禁されたくもねえんだ!! 誰か俺をただのモブに戻してくれぇぇぇぇぇぇッ!!」
夕暮れの学園に、総受けへと成り下がった元・悪役令息の絶望の悲鳴がどこまでも虚しく響き渡るのであった。
コメント
1件
**ウワッ第7話読み終えたんだけどヤバすぎる!!😭💕** テウルくん「遠巻きに鑑賞したいだけ」なのに、父上の手紙がきっかけでまさかの**全員のクソデカ感情が自分に向いてる**って気づいちゃったの最高すぎませんか!?!? カゼルとシオンがレイきゅんじゃなくてテウルでバチバチしてる図、もう腹筋崩壊したwww しかもそこに**デウス兄様**(クールヤンデレ属性最高)が降臨して「全ての虫を消す」って……もうカオスすぎて笑うしかない!! 最後の「抱かれたくも監禁されたくもねえんだ!!」って絶叫に全力で同意。このカオスな総受け構造、このままどう転ぶのかマジで気になる〜〜次の話も絶対読む!!🌸✨