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第14話
蝉が最後の力を振り絞って鳴いている。
夏休みも、あと少し。
私は、宿題から全力で逃げていた。
「もうやだぁぁぁ! 自由研究も終わってないし! 読書感想文も白紙だし!!」
叫びながらアイスをかじる。
(誰もいない部屋で叫んでるの、ちょっと虚しい。)
でも外に出れば、気分も変わるかもって思ってコンビニへ。
アイスの棒をゴミ箱に放り込んで、ふと前を見ると――
「あ、黒瀬いるじゃん!」
思わず声が出た。
黒瀬が、駅前のカフェから出てきたところだった。
……しかも、横には見覚えのない女の子。
(え、え、ちょっと待って。なにその自然な距離感。え?)
黒瀬はその子に何か渡してて、相手の子は「ありがとう!」って笑ってる。
(ちょっ、待ってそれ!笑顔でお礼!?なに!?)
「……ふ、ふぅん。別に……。ただの知り合いとかでしょ。ね?うん、知らんけど!!」
口の中でぶつぶつ呟きながら、なぜか自販機の影に隠れる。
(隠れてどうすんの私!!ストーカーじゃん!!)
黒瀬がスマホをいじりながら歩き出す。
その横を歩く女の子。
距離、近い。
(近い近い近い!!いや、別にいいけど!?気になるけど!?)
……なんで、あんな顔してんのよ。
いつも無表情なくせに、なんかちょっと優しげな感じ出してさ。
(あーーー!ムカつく!!)
通りすがりの猫に「にゃー」って鳴かれて、我に返る。
「……見てないよ!?なんも見てないし!!」
(完全に挙動不審。)
夜。
部屋の中、扇風機がカラカラ回ってる。
宿題プリントを開く。
でも、頭の中はあの光景でいっぱい。
「……誰だったんだろ、あの子。」
書きかけのノートに“黒瀬”って書きそうになって、慌てて消す。
(いや、名前書くほど気になってるのヤバくない!?)
そこにスマホの通知。
《黒瀬:宿題、進んでるか?》
「っ!! なんでこのタイミングでぇぇぇ!!」
机に突っ伏す。
(進んでません!心も!)
《うるさい。そっちは?》って打って送る。
送信したあと、スマホを枕に投げる。
「……ほんと、なんなんだろ。」
胸の奥でモヤモヤが広がる。
わけもなく、熱っぽくて、落ち着かない。
(別に、誰といようが関係ないのに……。)
天井を見上げて、小さく呟いた。
わ
「なんで、あんな顔してんのよ。」