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Wave3終了。
干潮、間欠泉、納品ギリギリ。
ひろは、処理と誘導に集中しすぎて、精神も体力も限界だった。
待機室に戻ると、ひろはヘルメットに手をかける前に、ぽすんと床に腰を下ろした。
ブキを腕に抱えたまま、背中を壁に預けて、ゆっくり目を閉じる。
「……だめだ、今日はふにゃふにゃモード……」
声はかすれていて、語尾がやわらかく崩れていた。
姿勢も、気配も、いつもの冷静なひろとは違って見えた。
まるで、雨に打たれた紙のように、輪郭がふわっと滲んでいた。
恒は、ツナギを外しながらその様子を横目でとらえる。
ペットボトルを手にしたまま、少しだけ歩み寄った。
「……ひろ?」
ひろは、目を開けずに答える。
「うん。今は、ふにゃふにゃしてる。」
恒は、ペットボトルのキャップを開けて、ひろの手元にそっと置いた。
ひろは、手を伸ばしてそれを受け取る。
その手つきが、いつもより少しだけ甘えているように見えた。
「ありがと、こう。」
恒は、ひろの顔を見たまま、静かにうなずいた。
耳は少し赤いけれど、目はそらさない。
いつも通りの落ち着いた声で返す。
ひろは、目を開けて恒を見た。
その目は、疲れているのに、どこか楽しそうだった。
「昨日の仕返し、成功?」
恒は少しだけ考えてから、まっすぐ答えた。
「……わからん。」
ひろは、恒の目を見て、ぽつりと聞いた。
「……動揺してる?」
恒は、少しだけ息を吐いて、言う。
「そりゃ、動揺するだろ!
昨日、“ふにゃふにゃになったらよろしく”って言ったばっかだろ。
まさか今日来るとは思ってなかった。予告と実行の間が短すぎる。」
ひろは、ぱちぱちと瞬きをしてから、笑った。
「……でも、ちゃんとよろしくしてくれた。」
恒は、ペットボトルを持ち直して、静かにうなずいた。
「それは、言われたからな。」
ひろは、少しだけ首をかしげて、冗談っぽく言った。
「じゃあ次は、言わなくてもよろしくしてくれる?」
恒は、間を置かずに返した。
「言われないと困る。」
その言い方は、いつも通りの調子だった。
迷いも照れもなく、ただ事実として返している。
ひろが笑って、
「……そっか。じゃあ、ちゃんと言うね。」
恒はうなずいた。
「そのほうが助かる。」
ひろは、壁にもたれたまま、目を閉じる。
「……次は、もうちょっと予告長めにする。」
恒は、ペットボトルを見つめながら、ぽつりと返した。
「助かる。」