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「刀に雷? カノン。あなたそれはどういう……」フィアナが不思議そうな面持ちで問うた。
「そっか、フィアナさんは知らないんですよね。わたしの黒黄刀は、雷を吸収させて強化できる特性があるんです。いわゆる特別製ってやつです」
小さな両手を腰に当て、カノンは自慢げに説明した。顔はさながら、おすましする童女のそれである。
「あいつに効くとしたら雷系の技だけ。つまりつまり突破口を切り開けるのは、ユウリ君の|雷槌《らいつい》とわたしの黒黄刀だけ! まことにまことに申し訳ないですが、フィアナさんには今回は援護役をお願いしたいです。お怪我のこともありますし」
すらすらとカノンは力説した。「わかったわ」とフィアナは力強く応じる。
ざわり。不気味な音がして、極小|悪竜《ヴァルゴン》が動き始めた。
ユウリは力強く|雷槌《らいつい》を突き上げた。瞬時に稲妻が昇天していき、折り返してきた。
カノンは黒黄刀を持ち上げた。雷が先端に命中し、バヂヂッ! 激しい音がして、黒黄刀が稲光を纏い始めた。
「準備万端! 気力充実! あとはあいつを倒すだけ、です!」
やる気満々のカノンが無邪気に叫んだ。
極小|悪竜《ヴァルゴン》の大群が押し寄せてきた。「雷晶壁!」ユウリは再び雷壁を展開。無数の敵を間断なく打ち落としていく。
「カノン!」フィアナは言い放つと、左手をすっと前に出した。
すると蝶翼の一部が分離。二十個近くの球体となり、カノンの廻りを漂い始めた。
「私の力の根幹である、子ユリシスの塊よ。あなたの動きに追随するようにしたから。ちょっとでも役に立てば良いんだけど。こんな手助けしかできなくて、何だか私、情けないな」
フィアナは寂しげに呟いた。するとカノンはにこりと微笑を浮かべる。
「何を仰いますやら、フィアナさん! とてもとってもありがたいサポートです! ではではとくとご覧あれ! わたしとユウリ君の怒濤の連撃で、見事勝利を勝ち取って見せますゆえ」
熱弁を振るい、カノンはキビタキ化した。ふわりと舞い上がり、雷壁の上を通過してリグラムへと接近していく。
「カノンは相変わらずわけがわからないけど、あの元気さは見習わないとな。さあて、俺たちも進むか。カノン一人に、命運を託すわけには行かないしな」
ユウリが覚悟を口にすると、フィアナは真剣な顔で小さく頷いた。
前に視線を戻し、ユウリは雷壁を出したまま前進を始めた。
突如、ユウリたちへの極小|悪竜《ヴァルゴン》の飛来が止んだ。一番の脅威と感じたのか、キビタキ・カノンのほうに全個体が向かったためだった。
フィアナが差し向けた子ユリシスの塊が、何体もの敵を打ち落とした。しかしあまりにも数が多すぎて、キビタキ・カノンの被弾は時間の問題だった。
ふわりとフィアナが雷壁の範囲外に出た。引いた右手にトライデントを生み出し、ぶん投げる。
勢いよく飛んだトライデントは、キビタキ・カノン間近の極小|悪竜《ヴァルゴン》を次々と貫いていった。そのままリグラムに命中するが、やはり金属皮膚に防がれる。
「サンキューです!」澄んだ声で礼を言い、カノンは突き進んでいく。わずかに残る極小|悪竜《ヴァルゴン》も、ひらりひらりと器用に避けていた。
頭の真上に到達した。カノンは人型に戻った。雷を帯びる黒黄刀を振り上げ、リグラムの頭頂部を突き刺さんとする。
刹那、リグラムの首の付け根に「口」が出現。中から極小|悪竜《ヴァルゴン》が飛び出してくる。
「カノン! 受け取れ!」叫んだユウリは|雷槌《らいつい》を横手投げした。
雷壁を纏った|雷槌《らいつい》は横回転しながら飛び、カノンは左手で見事にキャッチ。「口」の前にかざして極小|悪竜《ヴァルゴン》を撃滅し、右手の黒黄刀をリグラムの頭目がけて突き入れた。
黒|黄《キラーヴォ》刀が脳天に刺さった。ズバチチッ! 雷鳴が鳴り響き、リグラムの体内に雷電が侵入する。
「ぐおおおおおお! おのれ、羽虫どもが!」
苛立たしげなリグラムの怒声が轟いた。危険を感じたのか、カノンはキビタキに変身して退却していく。
数瞬の後、リグラムは爆発。辺り一帯に爆音が鳴り響いた。