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yukino
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吉田おいちゃん
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ち び
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🩷視点
俺は逃げた。
嫌いになったからじゃない。
むしろ、その逆だった。
大切になりすぎてしまったから。
仁人は、きっと知らない。
隣で笑ってくれるだけで満たされていたことも。
その笑顔を失うのが怖くて、何も言えなくなってしまったことも。
臆病だった。
だから離れた。
この想いごと消してしまえば、きっと楽になれると思った。
でも、そんなことできるはずがなかった。
街を歩けば思い出す。
ふと耳に入る音楽。
夕暮れの景色。
笑い声。
全部が仁人につながっている。
「……元気かな」
何度その言葉を飲み込んだだろう。
会いたい。
でも、会う資格なんてない。
あんなふうに傷つけてしまったのだから。
それでも、心は勝手だった。
気づけば、2人でよく歩いていた道へ向かっていた。
もう一度だけ。
姿を見るだけでいい。
そう思っていた。
なのに。
「……仁人」
振り返ったその瞳は、少しだけ悲しそうで、それでも変わらなくて。
胸が締めつけられた。
本当は何百回も謝りたかった。
だけど、口から出たのは短い一言だけだった。
「ごめん」
それしか言えなかった。
仁人は逃げようとした。
当然だ。
傷つけたのは俺なんだから。
それでも、このまま見送ったら、本当に二度と会えなくなる気がした。
そっと手首に触れる。
少し力を入れれば振り払えるくらい、弱い力で。
嫌なら離れていい。
そう思っていた。
だけど、仁人は立ち止まった。
震える声で「離して」と言った。
その声が、苦しくて。
本当はずっと抱きしめたかった。
もう一度だけ、その温もりを確かめたかった。
ゆっくりと腕を回す。
壊れものに触れるみたいに、優しく。
腕の中の体は少し震えていた。
俺も同じだった。
「もう離さない」
やっと言えた。
あの日、言えなかった言葉。
逃げ続けてきた想い。
全部、この一言に込めた。
仁人は静かに目を閉じる。
そして、小さくつぶやいた。
「……今度は、ちゃんとそばにいて」
その言葉を聞いた瞬間、張りつめていた心がほどけていく。
もう逃げない。
もう手放さない。
仮初めなんかじゃない。
遠回りしてしまったけれど、ようやく隣に戻ってこられた。
俺は腕に少しだけ力を込める。
「約束する」
今度こそ。
この手は、二度と離さない。
佐野さん視点も書いてみました
コメント
1件
ミロさん、第2話、拝読しました。 「大切になりすぎて逃げた」という冒頭の一文に、もう胸が締めつけられました。再会して「ごめん」としか言えないもどかしさ、それでも「もう離さない」と伝えるまでの葛藤が、本当に繊細で…。最後の「約束する」という台詞に、ようやく辿り着いた安堵と強さが感じられて、じんわりと温かくなりました。仁人さんの「今度はちゃんとそばにいて」も切なくて、素敵な再会のシーンでした🌷