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(もしかするとこいつは使えそうだ。)
カチッ、カチッ、カチッ
「……何をしている?」
低く冷静な声が、玲央の背後から響いた。
(やべぇな……。)
玲央はごくりと唾を飲み込む。背後に立つゼノの表情は読み取れないが、その視線が鋭くこちらを見据えているのは感じる。
玲央は瞬時に考えを巡らせる。
通信機のスイッチはすぐに切ったが、ゼノがどこまで気づいたかは分からない。
「……ちょっと、機材の調整をねぇ。」
玲央は軽く肩をすくめ、いつもの調子で答える。
「この機材、微妙にノイズが入ってたからさ。ついでにチェックしてたんだよねぇ。」
ゼノはじっと玲央を見つめたまま、ゆっくりと近づいてくる。
「それにしては、不自然な操作だな。」
玲央の指がピクリと動いた。
(……バレたか?)
ゼノは通信機のパネルを確認しながら、静かに続ける。
「この周波数……短波通信に適したものだ。もしや、誰かと交信しようとしていたのでは?」
鋭い指摘だった。玲央の脳内に、警報が鳴り響く。
(こりゃマズイな……。)
一瞬の沈黙が走る。
「さて、玲央。君は一体、誰と話そうとしていたのかね?」
ゼノは微笑を浮かべながらも、その目はまるで全てを見透かすような鋭さを持っていた。
玲央は表情を崩さずに、軽く笑う。
「おやおや、ゼノ博士? 俺を疑ってるってわけ?」
「当然だよ。君は最近、やけに私の研究に積極的になっていた。まるで”信用を得ようとしている”かのようにな。」
ゼノは玲央の目をじっと見つめる。
(こっちの動き、読まれてたってわけか……。)
玲央は内心焦るが、顔には出さない。
「そりゃ、こっちの暮らしが長くなれば、それなりに慣れるもんでしょ。」
玲央はあくまで余裕を装いながら、ゼノの視線を受け止める。
しかし、ゼノはさらに一歩踏み込んだ。
「ならば、君が通信を試みていたことを説明できるかね?」
玲央は一瞬、言葉に詰まる。
ゼノの口元が微かに上がった。
「どうやら、図星のようだ。」
玲央は内心舌打ちしながらも、冷静を装ってゼノを見た。
(……このままじゃ、マズイねぇ。)
どう誤魔化すか——玲央は次の一手を考え始めた。