「都愛、ちょい外出てくるから待ってて」
そう言いながら煙草を吸うジェスチャーをして外に行くローレン。
ここで吸ってもいいのに、って思うけど
部屋が煙くなるのは嫌だしまあいいか。
友達や刀也からきていた連絡を返してる間に
帰ってくるかーなんて思っていたけどそれでも帰って来ず
ぼーっと扉の方を見ていると
ブーッブーッと振動するわたしのではない携帯。
音のする方へ顔を向けると赤いスマホ。に表示される女の人の名前、と着信。
ローレンの遊び相手だ、絶対。いや彼女かも。
この後会う約束でもしてたのかな。
もんもんと嫌な想像ばっかりしちゃって折角ローレンと帰るのにこんなんダメ!と目を逸らす。
「やべー雨降ってきた」
最悪と不機嫌そうに声を漏らすローレンの長い赤色の髪からは水が少し垂れていた。
ローレンのスマホのせいで気づかなかったけれど確かに室内にいても聞こえる強い雨の音。
『傘、持ってないの?』
「俺が持ってるわけねーだろ、都愛は?」
トートバッグの中に小さめの折り畳み傘が、ひとつ。
…これは、一緒に入って帰ろうって誘うべき?
いやでもそれはちょっとあからさますぎる?
どうしよ〜って頭を悩ませている間に
折り畳み傘を持っていることがバレちゃって
おい持ってんじゃんと笑われた。
「別に大きいの買って帰ってもいいんだけど」
『うん』
「もったいねーし、都愛持ってんなら入れてほしーんだけど」
ダメ?なんて首を傾げて目を見つめられたら断れるわけなんてなくて。
『…しょうがないなあ』
「マジ!?優しいねえ都愛ちゃんは」
『小さいけど…』
「んーまあ都愛細いしいけるっしょ」
傘俺持つから、と折り畳み傘を奪われ外に出る。
思っていたより土砂降りでほんとにこの傘で大丈夫?
なんて嫌な予感は大的中。
濡れないようにって恥ずかしくて死にそうなくらいぎゅって寄って、
それでもやっぱり身体の半分とか髪の毛とか少し濡れちゃって。
ローレンの家の方が近いから先にそっちに行ってから
傘を返してもらってわたしも帰るつもりだったけどもう春とはいえ
ローレンの家の前に来る頃にはすっかり身体が冷えてしまった。
ざーざーなんて言葉じゃ表せないくらいに降っている雨を
ローレンの家の前で見ながら帰れるかなあなんて思う。
じゃあねと口を開こうとしたら先に口を開いたのはローレンで、
「都愛、寒いっしょ」
『?うん』
「……俺ん家入りな」
コメント
4件
はぅ...クズっぽさがある中の男らしさとかっこよさがあるなんて!! 毎回表現と話の展開大好きです!!今回も面白かった!
ローレン?お前…手出すなよ!!