「待っててな、タオル取ってくるわ」
そう言いバタバタと慌ただしく電気ひとつついてない向こう側に消えて、
わたしの後ろのドアはパタン!と大きな音をたて閉じてしまった。
…どうしよう。
「俺ん家入りな」なんて特徴のある低い声で言われて
頷かない女なんているわけなくて、わたしもその1人で。
定番の誘い文句かもしれないのに折角のチャンスを逃したくなくて…
その結果、家の中まで入ってきてしまった。
でも一応気を使ったというか、思い出したというか。
「女の人から電話きてたけどいいの?」と聞いてみたけれど
「あんなんより今寒そうにしてる都愛の方が大事」
って優しい目で言われたらそりゃもう……いっか、って。
「なに突っ立ってんだよ、入っていいですよ?」
『あ、えっと、お邪魔します…?』
「ふ、なんで疑問形なん。どうぞー」
ふわりと頭にタオルを乗せられる。
それで軽く髪とか服とか拭きながら家の中に足を踏み入れた。
ローレンの家は割と、いやかなり?綺麗だった。
男の人の家なんて刀也の所しか言ったことないけど
あんなに完璧人間みたいな刀也の家と比べても綺麗だなって思うくらいなんだから
かなり綺麗なんだと思う。
部屋をぐるりと見渡すと隅の方に大切そうに置かれているもの。
「んー?どした」
『あれって……ベース?』
「お、わかるん。そーそーベース」
仲いいヤツらと組んでんだよ、バンド。って照れたように笑った。
えーえー、そんなのさ、そんなの…。
『み、見たい。その、バンド』
「マ?いやそんな見せれるようなモンじゃねーっつうかあ」
『え、やだ絶対見たい』
「コラコラわがまま都愛ちゃんになんないの」
絶対絶対かっこいい。かっこいいけどまたダメな大人の部分知っちゃった。
バンドマンとかベーシストとか付き合っちゃダメ!ってよく言うもん。
ローレンてばほんとダメ。
でもそんな悪い大人を好きになっちゃったわたしも同罪。
見たいよーって駄々をこねるわたしを見てはぁ…とため息。
「まあそのうち何かしらやるだろーし、そん時ならいーよ」
『ほんと!?』
「可愛い都愛がそんなに言うなら仕方ねえ、でも他のヤツら見ちゃダメだからな」
『いや見るよ流石に、ローレンの友達なんだし』
「ダーメ!ぜってーダメ!全員かっけーから好きになっちゃう」
『なんないよー』
コメント
2件
ローレン可愛い 安定に好き