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じいさんの家を出てマンションに引っ越しをしたがあの時とは違い業者に頼んであっという間に終わった。
というよりも、帰って寝るだけで誰も部屋に入れるつもりもないから必要最低限のものしかこの部屋には無い。
あの家には相変わらず3人で住んでいる。
あいつが入社してからは、存在を無視するように仕事に打ち込んだ。
社長である親父はきっとあいつをもっと上の役職につけたいと思っていたようだが、実際のところあいつよりも能力のある人材は多く、俺がことごとく却下した。
ただでさえ、愛人との子であることは密かにささやかれているところに、能力以上の役職が与えられれば他の社員からも不満もでるだろう。
それは俺にも言えることで、認められるために必死に仕事をしてきた。
そして、仕事に疲れた時、適当に女を抱くという日々を過ごしていたある日、鈴木里子のSNSが目に入った。
学生時代、瞳を心配して俺に釘を刺してきた瞳の親友。
懐かしいと思いながら投稿された内容を見るとカラオケルームで同窓生で集まろうと言うものだった。
もしかしたら瞳が来るかもしれない。
金で俺を売った女。
それでも、いまだに忘れられずにいる。
いいかげん、忘れたいのに、忘れられないこの思いを会って一言でも言ってやれば終わらせることができるかもしれない。
そんな風に考えてカラオケ店に向かった。
店について鈴木里子の名前を伝えると部屋の番号を教えてもらい部屋の前に行くとすでに盛り上がっていてドアを開けたと同時に
「旦那に不倫されてまーーーーす」
とマイクで高らかに宣言した人物を見ると、ずっと忘れられないでいた人だった。
結婚していたのかとか、旦那が不倫とかそんなことよりも、瞳があの頃のようにあっけらかんとしていることに思わず笑みがこぼれてしまった。
知った顔を見つけて挨拶をしていると、松本ふみ子がいつの間にか隣に座っていた。
瞳の爆弾発言について皆んなが質問攻めをしている間に、瞳の隣に移動をした。
話を聞きたかったこともあるが、ここで松本ふみ子に馴れ馴れしくしくされるのも不快だった。
瞳の旦那の不倫相手の話から、パパ活の話がメインになったところで瞳が席を外した。
話をしたいと思い、部屋から出てレストルームの入り口が見える場所で待瞳を待っていた。
冷静に話をしようと思って声をかけたが、無視をされた事でつい意地が悪く
「俺をたったの500万円で捨てて、今はサレ妻って訳?つくづく俺を安く見ていたんだな」と悪態をついた俺に瞳が返してきた言葉の数々は俺をうちのめすのに十分だった。
何だ?
何が起こっていたんだ?
おふくろの話だけなら信じなかったが、瞳の父親にはっきりと金でカタがついていると言われた、嘘をついている感じはしなかった。
思考が停止して動けず瞳の後ろ姿を見送ったが、事実をしっかりと見極めたいと思ったとたんに体が動き出した。
瞳は二次会に行かずに帰るようだった。
話がしたいと伝えると、断るための方便ではなく本当に俺の体調を気にしてくれていることに嬉しいと思ってしまう。ただ、ここで別れてしまえばもう話をする機会が無くなるかもしれないと思うと少々強引ではあったが、タクシーで俺のマンションに向かった。
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