ねえ、知ってる?
愛する人に化けた妖怪が
自分の命を狙ってやってくるんだって。
「キヨー。」
優しい声でそう呼びかける。まぁ、いつも通りに。普段は上がることない視線が今日は珍しく持ち上げられた。ハイライトを宿しているのか否か曖昧な双眼が此方を捉える。
「……来てたんだ。忙しいんじゃないの?」
直ぐに視線を逸らされてはヘッドセットを付け直しモニターへと向き直る。その後冷たくそう言われては思わず肩を竦めた。
「キヨのためにすぐ終わらせたんだよ。俺がそれすらも出来ないと思ってる?」
「へぇ、そう。」
モニターから視線を外すことなく生返事をするキヨに呆れて溜息を零せば椅子がくるりと回った。
「…今、茶入れる。待ってて。」
「……いつもそんなことしてくれてたっけ?」
「……いつも、では無いかな。」
「珍しいな、キヨが淹れてくれるなんて嬉しいよ。」
「うん。待ってて。」
冷たいなぁ…。まぁ、いつも通りか。撮影してるわけでもないし。
そう自己完結させては先程までキヨが睨めっこしていたモニターに視線を運ぶ。どうやらゲームをしていたそうだ。このゲーム、随分と古いな。
「ん、お待たせ、」
「ありがと。」
短く会話をすれば茶を呷った。暖かい茶が体の芯に染み込む。身体が暖まったからか少し眠気が襲いかかった。
「……ちょっと寝るわ。流石に疲れた。」
「だろうね、おやすみ。」
ガシャン
「…キヨ?」
「……だぁれ?」
「誰って、俺だよ、牛沢。」
「へぇ、牛沢さんかぁ。」
「キヨ、?どうしたんだよ。なんで俺の手足なんか縛って…」
「俺がお茶を淹れる意味が分からないの?」
「……は?」
「俺がお茶を淹れるって言った時はうっしーにそういうことを求めてる合図だよ。」
「ッ……!そういう関係か!!」
「残念でした。」
「クソッ、!」
「お祓いしてもらうから此処で待ってようね。」
「お前の…魂だけでも……!!」
「キヨ。」
「…やっと来た。」
霊媒師さん呼ぶついでに本人を呼んだ。脱兎の如く駆け付けた牛沢はそれを見るやいなや顔を歪めた。妖怪も同様に。何も動じない俺を見ては更に顔を歪める。
「傷は?」
「何もなし。」
「ビビらねぇの?」
「ビビるわけないよ。」
「ほんっと…なんつーか無頓着っつーか…」
「信じてないだけね。」
「ま、これを見て信じたんじゃない?」
「悪い夢だと思っておくよ。」
「無理があるな。」
「ちゃんとお茶淹れてあげたから。」
「辞めろ。俺の悪い思い出。」
「言ってくれなかったけどね。」
「こいつに知られてたら腹切ってたわ。」
「…ウケる。」
その後霊媒師が来て無事にお祓いされた。こんなあっさり終わるんだなーとか思いながら夢だしいっかとかも思った。まぁ、後に夢じゃないことを知るんだけど。
誰も居なくなった部屋…否、詳しくはうっしーと2人きり。うっしーは優しく俺のことを抱き締めた。
「俺の勧めたゲーム、やってくれてんの?」
「…まぁね。」
「キヨがゲームをやるってことはそういうことだよな?」
「早く。」
「分かってるよ。」
うっしーが勧めたゲームを俺がやるという事は・・・・・・・・・そういうことである。
コメント
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こういう雰囲気のお話好きなんですごく嬉しいです…。書き方のクオリティが高くて勉強になります😽