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外では雷が轟き、稲光が研究室の窓を一瞬白く染める。雨粒が勢いよくガラスを叩き、遠くで落ちる雷鳴が体に振動として伝わる。いつもなら静かな夜のはずなのに、嵐の音に部屋全体が包まれ、普段の研究室の穏やかさとは違う緊張感が漂っていた。
くられは資料に目を落とし、ペンを握る手に集中していた。ツナっちも隣で静かにページをめくっている。いつも通り、どこか余裕のある雰囲気で、のんびりと研究の続きを楽しんでいた。
その時――
――ドォンッ!!!
窓のすぐ近くに雷が落ちたようで、強い光と轟音が一気に室内を震わせる。くられは思わず肩をビクッと跳ねさせ、小さく息を漏らした。目をぱちりと開き、驚いた表情でツナっちの方を見る。
「……ビックリした……」
呟きはほとんど囁きのようで、しかし確かに聞こえた。普段は冷静で、どんな実験のハプニングにも動じないくられが、ほんの一瞬だけ動揺を見せたのだ。ツナっちはその姿を見て、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
窓の外では稲光が再び瞬き、雨の音と雷鳴が重なる。くられはすぐにペンを置き、机の前に座ったまま肩の力を抜く。白衣の袖が手首まで覆い、膝にかかる裾がわずかに揺れる。いつもの落ち着いた姿勢とは違う、少しだけ無防備な仕草に、ツナっちは思わず視線を止めた。
「大丈夫ですか、先生?」
ツナっちは低く声をかける。くられは一瞬目を細め、微笑みながら首を横に振った。
「うん、大丈夫。でも……ちょっとびっくりしたね」
その言葉に、ツナっちは自然と微笑む。驚きと警戒が入り混じった表情や、肩を小さく震わせた様子が、普段見せないくられの一面として胸に響いた。
「雷、怖かったですか?」
「んー……普段はあまり気にしないけど、さすがにあの光と音は予想外だったね」
くられの声は落ち着いているのに、時折肩や背中に残る反応が、小さな驚きの名残を感じさせる。ツナっちはその細かな仕草ひとつひとつに心を奪われ、思わず息をひそめて見守る。
「……先生、やっぱり可愛いな……」
静かに漏れたその声は、自分でも驚くほど自然で、しかし確かな気持ちだった。雷の音が遠ざかるたび、くられは少しずつ落ち着きを取り戻し、肩の力も戻っていく。けれどその瞬間の小さな動揺や息づかいは、ツナっちの胸に鮮明に刻まれた。
二人の間に再び静けさが訪れる。雨のリズムと雷鳴の余韻が残る室内で、ツナっちはそっと手元の資料に目を落とすが、ちらりと見上げるくられの姿に、また胸がじんと熱くなる。光と音に揺れた一瞬の可愛らしさ――それを今は誰にも邪魔されず、静かに心に留めていた。