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「え……あ……、あんたは誰だ」
「私?私はベニカだよ」
「俺は、ルウゼスだ」
「じゃ、ルウゼス、なんでこの山に入ったの?」
ベニカはルウゼスが普通の人間ではないことに気づいていた。だから、もしかししたら魔物を捕まえようとする魔物ハンターかもしれないと考えていた。
ベニカは魔物が好きなので魔物ハンターのことをあまりよく思っていなかったのだ。
「授業がつまんねえからサボりに……」
ベニカの考えは違っていた。なので、ベニカは安心……しているわけではなく、腹を抱えて大笑いしているのだった。
「ハハハwww 、なにそれwwあんなに真剣に考えたのがバカみたいww」
キョトンとしているルウゼスに「ごめんw 、ごめんwww」と涙目で謝る。
「ハア、面白いね君。」
「は?」
( サボるのが面白い?不真面目がおもろいのか?)
「ベニカは変わってるんだな。」
「アハハ、よく言われる。いやあ、照れる照れる」
冗談っぽく、笑いながら言った。
「それじゃあ、俺は」
ルウゼスはそう言って、きた道を戻ろうとする。
「えっ、もうサボり終わりなの?」
ベニカは面白くなさそうに顔をブスッとさせていた。
だが、急にニヤっと口角を上げ、悪巧みしている顔でこう言った。
「ルウゼス、私について来ない?」
はじめ、ルウゼスは疑うようにベニカを見た。
急にさっき出会ったばかりの人がついて来ないかと言っているのだ。普通は警戒するだろう。
だが、ルウゼスは警戒しているわけではなかった。授業をサボることが出来るということに感激していたのだ。だから、それは冗談でいってるわけではないのかという疑いをもったのである 。
ベニカは悪巧みしている顔をしていたが、冗談を言っている雰囲気はなかった。
それがわかると、ルウゼスはベニカに疑いの目を向けるのをやめた。そして、ベニカと同じように口角をニヤっと上げる。
「ついて行くぜ、師匠」
ベニカは魔物が暴れているところへ行って、落ち着かせるという仕事をしていた。だから、ルウゼスが連れていかれるところはいつも危険な場所だった。
それは、学園という生ぬるい場所にいたルウゼスにとっては、とても刺激的で面白いものだった。
旅を続けていくうちにだんだんとベニカの性格がみえてきた。
大雑把で戦闘好きだし、よく冗談を言うが、仕事はきっちりとしていて、困っている人や魔物がいたら助けたりする優しさを持っているヒトだった。
そんなベニカにルウゼスは惹かれていった。
「なあ、最近暴れてる魔物多くねえか。」
「そうだね。みんな思春期なのかな」
「魔物全員が思春期になるって、あり得ねえだろ!」
「アハハ、そうだよね。じゃあ、思春期じゃないなあ」
ルウゼスはベニカが深刻そうな顔をしていないのでそんなに大したことじゃないのだと思っていた。
「ねえ、ルウゼス、もう学園に戻った方がいい」
「何いってんだww」
ルウゼスはいつもの冗談だと思った。だが、ベニカの声も表情も真剣だった。
「本気なのか?」
「うん」
「何でだよ!ベニカがついて来いって言ったのに……。急に戻れだなんて勝手すぎるだろ……」
怒っていたルウゼスの声がだんだんと悲しい声に変わっていく。
そんなルウゼスをみてベニカは胸が痛くなり、苦しい気持ちで言う。
「ごめん……勝手なのはわかってる。でも、もうこれ以上君に迷惑はかけられない」
「俺は迷惑だなんて思ったことねえ……」
「ありがとう。正直に言ってくれる君に嘘をつくのはダメだね」
ルウゼスはベニカが何か理由があって自分と離れようとしているのをなんとなく気づいていた。
その理由は、自分を想ってのことだということも。
「実は、」
だからこそ聴いてしまったら、離れないといけなくなる。
「嫌だ!」
「えっ」
「別に俺は危険な目にあってもいい。だから、俺はベニカと一緒にいたいんだ」
「!どうしてっ」
「ベニカのことが好きだから」
突然のルウゼスの告白にベニカは目を見開く。彼の真っ直ぐな好意にベニカの白い頬が仄かに赤く染まる。
「じゃあ、なおさら君を連れていけないなあ」
「何で?」
「だって、好きな人を危険な目にあわせるわけにはいかないよ」
ルウゼスのことが大切だから離れてほしいというベニカの想いを無下にすることが、ルウゼスには出来なかった。
「わかった。学園に戻る」
「ありがとう」
「ただ、約束をしてもいいか?」
「どんな?」
「俺がもっと強く、聖魔神くらいに強くなったら、俺と結婚してくれ」
「わかった」
そして、ベニカは優しい笑みを浮かべて呟く。
「それまでずっと待ってるね。一人で旅をしながら」
「ああ、約束だ」
ルウゼスはベニカの背中に腕をまわす。ベニカもそっとルウゼスの背中に腕をまわした。
しばらくの間、二人は抱き合っていた。
そして、二人とも手を離すとそれぞれの道に目を向ける。
「じゃあな」
「じゃあね」
ルウゼスとベニカは振り返らずに自分の歩む道だけを真っ直ぐに見て、歩き出した。