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小屋へ戻り、俺は『家』を作るべく無人島開発スキルを発動しかけたのだが――、キャンプファイヤー前で炎を見つめるアルフレッドの存在に気付いた。
あんなところで何をやっているんだか。
「どうした、アルフレッド。まるでクビを宣告された兵のような顔をしていたぞ」
「……ぼっちゃん。ある意味ではそうかもしれません」
「どういう事だ」
「私は帝国を無断で抜け出し、この無人島に流れ着いたのです。もう私の居場所などありません。皇帝陛下も今頃は失望なされている……これで長年、帝国に仕えた『スナイダー家』は終わりです」
俺の為に投げ出して来てくれたんだよな。なら、俺が彼を導かねば。
「希望を捨てるな、アルフレッド。俺がいるだろう」
「……ですが」
「言ったろう、俺はもう戻る気はないと。この無人島で最強の国家を作り上げる。幸い、この島の資源は豊富だ。実は人類にとって重要な場所だったのかもしれないな」
「しかし今の人数では……」
「人手か。そうだな、いずれは人口を増やしたい。だが、今はこの三人――いや、四人でいい」
「四人? はて……ぼっちゃんに、スコル様、この私と三人しかおりませぬが」
「ああ、実はこの無人島をくれたヤツがいてな。声だけで正体は不明。名前を『ハヴァマール』と言うらしいんだ」
「ハヴァマール……」
その名を不思議そうにつぶやくアルフレッドは、カッと目を見開いた。いやいや、怖いよ! てか、なんか覚えがあるようだな。
「なんだ、知ってるのか」
「それは“世界聖書”に記されている『聖魔大戦』の伝説。槍の王の神話にございます」
「……槍の王、だと?」
「ええ、世界を恐怖で支配し、後に『魔王』として名を歴史に刻んだ怪物……」
つまりなんだ、あのハヴァマールは『魔王』だというのか? アルフレッドは、険しすぎる表情で説明を続けた。
「――ですが、聖書には破れたページがあるらしいのです」
「破れたページ……」
「ええ、そこに世界の真実が書き込まれていたに違いありません。もしかすると、ぼっちゃんと何か関係があるのかもしれませんな」
だとすれば、俺はいったい……何者なんだ。そう疑問が渦巻いていると『声』がした。
『……ほう、新たな仲間が増えたようだな、ラスティ』
「ハヴァマール! やっぱり静観していたんだな」
『そうとも。……それより、執事の男……お前は『スナイダー家』の者だな』
話を振られ、アルフレッドは冷静に声に反応した。
「お久しぶりでございます、ハヴァマール様」
……なんだって?
今、アルフレッドは何と言った?
久しぶりでございます??
どういう事だ……!
『やはり、アルフレッドか。少し若返ったか』
「お世辞は不要です。それより、ぼっちゃんの件ですが」
『分かっておる。帝国は、我が契約を放棄した。だからこそ、世界は不安定になり……経済は衰退した。今も尚、ドヴォルザーク帝国やその他の国は、大混乱中。第三皇子・ラスティを探し出そうと躍起なっておる』
「――となると、やはり『魔王』というのは……」
『そんなもの、帝国のでっちあげにすぎん。余の力を恐れた先代の皇帝は、余を魔王認定し、聖書にそう付け加えたのだ』
な、なんだって……魔王がでっちあげ? つまり、俺は魔王の息子とかでもなかったわけか。そりゃそうだよな、魔王の力なんて皆無。そんな片鱗すらないわけでして……。俺はそう、普通の人間なんだ。……多分。