「えっ、本当にですか? チーフも好きだったなんて……」
意外さもさることながら、何よりクールな上司の思わぬ一面を見てしまって、なんていうか、会社では完璧すぎるチーフの見たこともないような照れ顔に、逆にドキドキとさせられてしまいそうで……。
「うん、そうなんだがな、」
相変わらず照れくさそうな表情は崩さないままで、
「だが、できたらこの件は、君と僕だけの秘密にしておいてくれないか?」
矢代チーフが、微かにしわの寄った眉間に人差し指を当てて、やや戸惑ったようにも話した。
「秘密に、ですか?」
「……ああ、その、男がかわいいもの好きとか、やっぱりちょっと恥ずかしい……だろ?」
メガネ越しに上目な視線がふっと送られて、一瞬、胸が高鳴る。
「え、あ、はい」と、答えた後で、「ああえっと、はいじゃなくて、いいえ!」と、言い直したことで、なんだかわけのわからない返事になって、矢代チーフには喉元でククッと笑われてしまった。
「あっ、あの、でも! 実は私も、かわいいものが好きとか、あんまり周りには言えなかったので、同じような感じですから。だからここは、お互いに秘密っていうことにしましょうか」
「……そうしてもらえるか?」
わずかにはにかんだような笑い顔に、こんな顔もできるんだ……と感じると、またしても胸はキュンと疼いて……。
かくして私とチーフとは、ミコ&リコを好きなことを共有する、秘密の間柄になったのだった──。
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