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会社を出て、地下駐車場に止めたいるまの愛車に乗り込んだ瞬間。それまで「完璧な上司」の顔をしていたいるまが、ハンドルを握る前に深いため息をついて、助手席のなつに覆いかぶさるように顔を近づけた。
「……なつ。さっきの佐藤、何?」
「……何って、同期だろ。腰痛いの心配してくれただけだって」
「顔触ろうとしてた。肩抱いてた。……俺、会議の資料が全然頭に入らなくなったんだけど、どうしてくれるの?」
いるまの目が、冗談抜きで据わっている。仕事中は「シゴでき」だけど、なつのことになるとIQが下がってしまうのが彼の悪いクセだ。
「……お前のせいだろ、腰痛いの。……誰のせいでこんなに歩くのが大変だと思ってるんだよ、バカ」
なつが顔を赤くして言い返すと、いるまは一瞬で「しゅん……」と項垂れた。
「……それは、本当にごめん。……でも、他の男に触らせるのは禁止。……いい? 帰ったら消毒(という名の手料理とマッサージ)だからね」
家に着くなり、いるまはなつをひょいとお姫様抱っこしてソファまで運んだ。
「ちょっと、いるま! 歩けるってば!」
「ダメ。なつは安静にしてて。……はい、クッション。……はい、お茶。……あと、これ」
いるまが持ってきたのは、ひんやりとした湿布。
なつのシャツの裾をそっと捲り、腰の痛む部分に丁寧に、優しく貼り付けていく。その手つきは、さっきまでの嫉妬に狂った男とは思えないほど繊細だ。
「……痛くないか?」
「……ん。……ありがとな、いるま」
「……あいつに貼らせなくてよかった。……なつの体を見ていいのも、触っていいのも、世界中で俺だけなんだからな」
いるまは湿布の上から、なつの腰を包み込むように大きな手を置いた。
じわじわと伝わってくる手のひらの熱が、痛みを和らげていく。
「……いるまさん、……じゃなくて、いるま。……お前、本当に俺のこと好きすぎるだろ」
「当たり前でしょ。……部長としても、恋人としても、なつは俺の特別なんだから」
結局、その夜の夕食はいるまが「あーん」で食べさせようとしてなつが全力で拒否したり、お風呂まで抱えて行こうとして揉めたりと、いつも以上の過保護っぷり。
「……なつ、明日も腰痛かったら会社休んでいいぞ。俺が有給の許可出すから」
「……公私混同すんな、バカ部長!」
なつのツッコミに、いるまは幸せそうに笑って、そのままなつを腕の中に閉じ込めて眠りにつくのだった。
コメント
1件
いるまのギャップがすごくいいですよね……! 仕事中は完璧なのに、なつさんに嫉妬してIQ下がっちゃう感じ、可愛すぎます。湿布貼る場面の優しい手つきが、独占欲の強さとちゃんとリンクしてて「ああ、大事にされてるんだな」ってほっこりしました。あーんの攻防とかお風呂抱っことか、明日もこの2人のバカップルを見たいです🤍