コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
長く歩いて、村に着いたのは昼過ぎくらいだった
本当はすぐにでもコウを探したいと思っていたのだが、それと同時に会うのが怖いという感情が邪魔して、俺はそれを後回しにした
そして、村にある小さな食事屋が併設された宿屋に向かった
少し遅めな昼食は野鳥のソテーやこの村近くでしかとれない野菜のサラダなど、少し懐かしい物だったが、普段から口数が少なめのサクに加え俺もそわそわして落ちつかず、静かな昼食になった
昼食後、宿をとってから心を決めてコウを探しに村に出た
サクには宿で待ってても良いと言ったが付いてくるというので一緒に探す事にした
昔、コウとした遊びや俺が叱られるのをコウが庇ってくれた話などをしながら、そこまで狭くない村を歩く
そうして十数分程歩いて着いた、かつてコウが住んでいた家を見て俺は思わず固まった
一見するとあの頃と変わらずそこに立っているのだが、まるで人の気配が無い
ただ家主がいないだけと方を付けてもよかったのだが、それにしてはあまりに···。
「生活感が無い」
そっと窓から室内を覗いてみたときにサクがそう呟いておれは奥歯を噛み締める
じわじわと嫌な予感が脳に侵食してくる
「ひょっとしたら引っ越したのかも知れないな」
俺はその嫌な予感から目をそらして明るく言う
しかし引っ越したと言うには室内には家具等が多く残っていて、引っ越した可能性が低いのは、サクにも自分にも分かっていた
「おまえさん··· もしかして、ジスかい?」
俺がどうしようか悩んでいると唐突に声をかけられた
はっとして声がしたほうを見ると、人の良さそうな丸顔の女がいた
一瞬誰か分からず固まっていたが、ふと思い出した
「マリィおばさん!」
お互い、昔から年を取って(当然の事だが)あの頃と変わったが、それでも纏う雰囲気や面影で分かった
彼女は昔俺がこの村に居た時にもこの村にいて、明るい性格や人の良い笑顔で村の皆から慕われていた人だ
もちろん俺やコウも彼女のことを本実の叔母のように慕っていた
そんな彼女は感慨深げに俺を見てからサクに目線を移す
「そちらの彼は?」
「こいつはサク。今一緒に旅をしてる仲間だ。」
俺がサクを紹介するとマリィはにこにこと人好きのする笑顔をサクになげかけた
サクもぺこりと軽く会釈をかえす
そうだ
「なぁマリィ、昔この家に住んでいたコウってやつを覚えているか?」
俺がさっきまで見ていた家を指差して聞くとマリィは一瞬言葉を詰まらせた
「あ···あぁ、覚えてるよ。おまえさんと二人で遊んでいたのをよく見てたからね」
マリィの一瞬の逡巡を見て俺はジワジワ侵食してくる嫌な予感に顔をしかめたくなる
「···コウは···」
この質問はしない方がいいとわかっている
きっと後悔すると
でも俺は思いとどまることも出来ずに口を開く
「コウは、今どうしているんだ?」
俺の質問にマリィは顔を強ばらせた
俺の質問に答えるかどうか悩んでいるようだった
しかしマリィは複雑そうな顔をしながらもお茶を濁したりはしなかった
「コウはほんの半年ほど前に死んでしまったよ」