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文章の表現やストーリーの流れがすごい好きです!今から続きを見るのが楽しみです!!
「近くに飯屋ある?」
朝飯を食べていなかったから、動いたからか、かなり空腹だった。
「近くに、ファミレスあるっぽいよ」
スマホの画面を指で滑らせながら、叶がファミレスがあるであろう方向を指さす。
10分ほど歩いたところで、看板が見えた。
季節は、秋に近いのにも関わらずじりじりとした暑さが降り注いでいた。
濡れていた服も乾き、風を待っていた。
「いらっしゃいませ。何名様でございますか?」
「2名です」
エアコンが効いていて涼しい店内に入り、向かい合わせに座り、メニュー表を開き、各自好きな物を頼んだ。
「なぁ、叶」
「ん?」
「なんで海行きたかったんだ?」
「んー、特に理由はないけど、しいて言うなら暑いからかな」
叶が頬杖をしながら答えた
「だったら、室内でよくね?」
「それもそうだね」
はっ、と軽く笑うと叶は、いつも通りの柔らかい笑みを浮かべた。
いつも通りの笑顔なのに、どこか違和感を感じた。
「お待たせ致しましたー」
そんなこと思っていたら、店員が料理を届けにきた。
「ありがとうございます〜」
いつも通りに叶が、また柔らかい笑みを浮かべながら料理を置いてもらった。
その笑顔は、いつも通りだった。
さっきの違和感は、気のせいか。
昼休憩を終えた俺達は、また海まで雑談を混じえながら、歩いた。
「ねぇ、葛葉、泳ぐ?」
「えぇ、俺はいいわ。お前が泳いでんの見とく」
「逃げんの?」
煽るような口調でこっちを見た。
あいつは、俺の動かし方をよくわかってる。
「はぁ?逃げてねぇよ」
バシャン、と勢いよく海に入ると思いのほか水が冷たかった。
「つめてぇぇぇぇえ!!」
叫ぶ俺を見て叶は、ケラケラと笑った。
叶は、肌をなるべく露出したくないらしく、ラッシュガードを着ている。
そして、叶が「葛葉、肌出しすぎじゃない?」と予備で持ってきたもう一枚のラッシュガードを渡され俺も着ている。
俺は別にそこまで露出を気にしないから、なんでもいいんだけど。
「そこまで冷たくないでしょw」
と言いながら俺に水をかけた。
俺も容赦なく叶に水をかけた。
「冷たっ、ひどぉーい」
「お前が先にやったんだろうが」
笑いながら、比較的浅い所で叶は浮き輪で浮かびながら、俺が泳いでいるのを見ていた。
「お前も泳げよ」
浮かんでいる叶の浮き輪を掴んだ。
「僕、泳げないんだよねー」
「嘘つけ、お前水泳タイム俺より速かっただろ」
叶は、「あ、バレた?」と言いながら浮き輪を外し俺にかけた。
「だって、顔に水つけたくないし〜」
叶が言い終わる前に、叶の顔目掛けて水をかけた。
「うわぁっ!!水口入ったぁぁ、葛葉!!」
「はははっ、これでもう泳げるだろ」
「突然かけるのは違うってぇ」
そんな馬鹿やりながら、笑い合った。
あっという間に、日が沈んでいき、浮き輪を持ちながら浜辺に戻り、海に沈んでいく夕日を見ながら、ホテルに戻った。
「ア゙ア゙ー、えぐい疲れたー」
「沢山泳いだしね」
先に風呂に入り、男にしては長い髪を乾かし途中の叶が椅子に座っている。
「腹減ったー」
「後で、下の階のご飯食べいこうか」
「俺風呂入ってくるわ」
「いてらー」
風呂に入りながら、海水でベタつく肌をシャワーで洗い流した。
「ちょっと焼けたな」
服の境目であろう部分が薄らと色が別れていた
「ん、葛葉も髪乾かす?」
髪が乾き終わり、Twitterを見ている叶の横に座った。
「めんどいから、お前乾かして」
「しょうがないなー」
俺を椅子に座らせ、ドライヤーで髪を乾かし始めた。
机の上には、叶のスマホとブラシとヘアゴムが置かれていた。
「葛葉って、髪綺麗だよね」
「髪が綺麗でも、別に何も変わらんだろ」
ドライヤーで声が聞こえにくいため、多少声を張りながら会話をする。
「えー、髪綺麗なの羨ましいけど」
「お前も綺麗じゃん」
鏡越しに叶は、キョトンとした顔をして軽く笑った。
「ありがとう、でも、僕の髪ちょっと癖毛だからさ」
「ふーん」
そういや、こいつの母親は、ストレートなのにこいつは癖毛なのか。
あ、そうだ。こいつの”元”父親は、癖毛だった気がするな。昔の記憶だから確実では無いけど、そうだった気がする。
「葛葉ー、髪乾いたよ」
叶は、ドライヤーの電源を切り、ブラシで髪をとかしていた。
「ん、ども」
「そろそろ、ご飯食べに行こうか」
「そうだな」
「何食べたい?」
「肉か肉」
「そう言うと思った」
「じゃあ、ここにしようか」と叶がハンバーグ屋を指さした。
俺は頷きながら叶の後を着いて店内に入った。
叶の見つけたハンバーグ屋で夕食を済ませ、近くのコンビニに立ち寄り、アイスとペットボトルを2つずつ買った。
「うわ、あったけぇぇぇ」
「やっぱ、夜は外寒いね」
秋に近い季節の夜道は、海に近いこともあって寒かった。
叶は、そうでも無さそうだったけど、寒さ耐性のない俺は凍えそうだった。
「なのに、アイスって」
「部屋着いたら暖かいからすぐにアイス食べたくなるよ」
そう言いながら、小さい冷凍庫にアイスを入れた。
俺が持ってきたゲーム機と叶が持ってきたコントローラーを使ってゲームをすることになった。
ゲームの実力もかけた時間もほぼ同じ。
ここまで競い合えるやつは、中々居ない。俺は、叶とゲームをすることが好きだ。
単純に楽しい。
同じゲームをやっていても、戦い方は全く違う
例えるとFPSでは、俺は近距離戦が得意でガンガン敵と距離を詰めて戦う、一方叶は、遠距離で相手が気づかないような遠くから遠距離銃で、撃ち抜き敵との距離を一定に保つ戦法をとる。
「葛葉っ!敵そっち行った!!」
「おけ、撃つ撃つ」
部屋にゲーム音とコントローラーの操作音、俺達のうるさい声が響く。
「あと、1人だぞ」
「あっ、いたいた、右右、あの建物の二階!!」
「ピンピンピン」
「ここ、ここ、ここ!!」
ほぼ脳死の会話をとりながら、必死にゲームにくらいつく。
この瞬間がとてつもなく楽しい。
「うわぁあああ!!!勝ったァァァァ」
「ないすぅぅぅぅ!!!!」
コントローラーを片手に叶とハイタッチをする
ゲーム画面には、「Champion」の文字が煌びやかに表示されていた。
「もう一戦行く?」
「たりめぇーだろ」
「だよね」
その後、満足するまで何度も繰り返しゲームをして、眠くなった頃に電源を落としベットに飛び込んだ。
「あっつー」
「まぁ、あれだけ叫んだしね」
「喉いてぇわ、アイス食うか」
「ほら、食べたくなったでしょ」
冷蔵庫からカップ型のアイスと棒状のアイスを出し、棒アイスの方を俺に差し出した。
「はい」
「ん」
火照った体にアイスが入り、ひんやりとした物が胃の中に入っていくのがなんとなくわかった
「うめー」
「うまいね」
「もう寝るか」
「そうだね、もう0時回ってるし」
そう言われて、スマホの電源を付けると0時25分と表示されていた。
楽しい時間はあっという間か。
その後、歯を磨いて、さっきしたゲームの新キャラの使いやすさや、海が思ってたより綺麗だったーなど、軽い雑談をしながらベットに寝転がった。
「電気消すぞー」
「はーい」
暗くなった部屋には、僅かに外からくる月の光と耳をすませば聞こえる、小さな波の音だけがこの部屋で動いていた。
少し動くとシーツの擦れることが部屋に響いて消える。
叶は、もう寝たのか。
息をしているかも分からない程小さな寝息を立てている。
叶の方を向くと小さく丸まって僅かに布団を上下させていた。
その姿は、まだ小さい子供のようだった。
何もかもそつなくこなす叶は、性格も落ち着いていて優しく、周りの奴らよりも少しばかり大人っぽく見えた。
他の奴らも叶には、似たような印象があるのだろう。困ったことがあったり、相談事となると皆叶に頼る。
叶は、その事に嫌な顔を一切せず受け入れ、流れるように対処する。
その時叶は、決まって優しさともうひとつ何か別の感情を混ぜた笑い方をした。
俺は、その様子を少し遠くから眺めていた。
叶は、強い感情を見せることがない。
多分自分の中に溜め込んでいるんだと思う。皆が自分を頼りにしているから、自分がしっかりしていなくては、なんて考えているんだろうなと勝手に思ってる。
ホントの理由はわからない。いや、わかるのか?俺が見て見ぬふりをしているだけで。
自分でもよくわからない。
そんなこと考えてもどうしようもない。
あの日の夜、俺に必死にあいつなりの助けを悲鳴のような泣き声を浴びせ、強い感情を表に出した叶を何度も思い出す。
あれから一度も叶から、その話をすることが無くなった。
あの夜の時以外、叶とは数年間一緒にいるけれどあそこまで感情を気持ちを露にしたところを見たことがない。
あいつは…。
段々と考えるのが面倒くさくなって、瞼をそっと閉じた。
瞼をとじると頭の中に、今日叶がファミレスでした柔らかいが違和感のある笑顔を思い出した。
もう、寝よう。深く考えるのも、勝手に妄想で考えを巡らせるのもよくない。
眠りに入ろうと布団に顔まで潜った時だった。
隣のベットからシーツの擦れる音がして
「葛葉、起きてる?」
優しい声で俺に呼びかけた。
いつもなら、短い返事をするのに、なぜか黙って狸寝入りをした。
すると、叶は「もう、寝ちゃったか」と言ってベットから立ち上がったであろう音がした後に、足音がして荷物の置いてある机の方に向かったことがわかった。
布団の隙間から、机の方を見てると、自分の荷物を漁り何かものを持ち出したあいつが部屋の出入口に向かっているのが見えた。
灰色のパーカーを羽織って、足音を立てないようにし、ドアを開け部屋を出ていった。
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作者 黒猫🐈⬛
「笑顔の裏側」
第5話 わからない
※この物語は、本人様との関係はありません
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ー続くー