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sm side
次に目を覚ました時には、俺は保健室のベッドに横たわっていた。
周りを見渡す気力もなく、俺はもう一度目を閉じようとした。
だが、その隣から彼の声が聞こえた。
「っ…!?スマイルッ…!」
彼は身をベッドに乗り上げて、俺を心配してくれる。
「顔色悪いと思ったら、急に倒れてッ…」
そういう彼の目は少し潤んでいた。
「…ごめ、ん…、」
なんとか出した声は、とても無気力だった。
「…スマイル…」
今の俺はもうどうしようもない気持ちに襲われていた。
全てがどうでもよくて、生きる意味も見出せなかった。
唯一動かせる手を、彼に向かって伸ばしてみた。
でも、やっぱり届かない。
「…スマイル、最近体調悪い…?」
「な、んで…?」
ひどく喉が掠れていて、声がでない。
「…俺でよければ話聞くからさ、!」
「俺…スマイルがいなくなったらやだよ…」
彼は俺の手をそっと包み込み、大粒の涙をポロポロと流した。
俺はそんな彼を見て、心がざわついた。
俺の体調が回復してきた後、彼は異常なほどに俺を介護してくれた。
教室まで向かうだけなのに何度も、何度も俺を心配して、何回も泣きそうになって、
「スマイル…」
もう、やめて。
俺の名前を呼ばないで。
俺はもう誰も信用しちゃいけない。
また何かを失わないために。
「っ…」
俺はついに決意した。
「…もう話しかけてくんな、」
「ッ…え…、?」
「ずっと嫌いだったから、もう近づいてこないで。」
ごめん、
自分のエゴで人を痛めつける、それもまたあいつらと同じようで、胸に深く刺さる。
これは彼のためでもあるから。
こんな俺と一緒にいて欲しくないから。
そう自分に言い聞かせ続けた。
「なん、で…、?」
「おれ、はッ…、」
今にも消え入りそうなか細い声で、絶望の表情を見せる彼。
俺はそんな彼を見ているのが耐えられなくなり、咄嗟に教室から飛び出した。
そのまま外へ駆け込んで、俺は家まで無我夢中で走った。
でも、彼のあの顔は俺の脳裏にこびりついていて、思い出すたびに胸が痛くなる。
家に入り、俺は玄関の前で崩れ落ちた。
「……、」
荷物も、教科書も学校へ置いてきてしまった。
今の俺には、何もない。
俺を愛してくれる人はおろか、家族も親戚も、自分の居場所さえもない。
唯一、俺を心配してくれていた友達はたった今、
自らの手で手放した。
俺は、はたしてあの人の「友達」と呼べただろうか?
無愛想で、不器用で、自分勝手。
ただのクラスメイト、いや、それ以下の存在だった。
でも、もうそんな関係も全て終わった。
俺の過去に、俺の未来に、俺自身に希望はあるのだろうか?
誰にとっても不必要な存在。
もう、全てを終わらせよう。
過去も、今も、未来も
先生も、クラスメイトも、友達も、家族も、
俺は、いつものように靴を脱いで、
いつものように手を洗って、
いつものように部屋へ向かった。
今日は棚に置くはずのカバンが無い。
でも、そんな事どうでもいい。
俺は窓をゆっくりと開けた。
隙間から入る風が心地良い。
正面には綺麗な夕日が瞼に映る。
窓に手を掛け、身を乗り出す。
今日は早めに寝てもバレないよね。
昔だったら怒られてたかなぁ、
「…おやすみ、」
飛び降りた時の世界は、まるで世界がひっくり返ったようで、風の音が煩い。
周りの景色がゆっくり流れていくようで、とても綺麗だった。
最後に映ったその夕日は、
俺を優しく照らしてくれているような気がした。