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sm side
俺は白い空間に居た。
手足の感覚が無い。
俺は本当に死んだのか?
「っ…」
耳鳴りがする。
でも、次第に遠くから声がした。
「……る…」
「、ま……る、!」
「スマイルっ……、!!」
俺は、目を覚ました。
頭が、いや、全身が打ちつけられるように痛い。
しばらくすると、焦点が1人の人に合う。
「スマイルっ…!?」
そこには、見たこともないほどぐしゃぐしゃな顔をした「彼」がいた。
目は充血し、頬には涙の跡がいくつもある。
目尻には涙を溜め、その涙が頬を伝って俺の額にポツリと落ちる。
何度もしゃくりあげて、ようやく安堵した表情を見せた。
なんで、
なんでそんな顔をするの?
「お母さんっ…!お父さんっ…!スマイルがッ…!!」
お母さん…?
あぁ、そうか、俺は…
助かってしまったんだ。
できれば、彼とは顔を合わせたくなかった。
彼に合わせる顔なんて、俺にはなかったから。
また彼らの声が遠のいていくような気がした。
また目を閉じようとしたその時、ガチャ、と扉の開く音がした。
[スマイルさん?大丈夫ですか?]
知らない人に突然声を掛けられる。
そこで気づいた。
俺は病院にいるんだ、と。
俺は顔も動かせないまま、ただ天井を見つめることしかできなかった。
『スマイル君、!大丈夫?』
『大丈夫か?』
他にも声が聞こえる。
きっと、なかむの親あたりだろう。
「スマイルッ…」
周りの音がうるさい。
もう、楽になりたいのに。
なんで、なんで俺はこんなところにいるんだ。
俺は、ダメ元で声を出してみる。
「な……んで、…」
その声はひどく掠れていて、自分でも誰なのか分からないほどだった。
俺は体を起こそうとする。
だが、それはすぐに看護師さんによって止められてしまった。
[…!]
[まだ完治してないのですから、安静にしてください]
なんで。
生きる理由だってないのに。
「なんで、おれ……は、いきてる…の…?」
掠れた声で訊ねる。
『それはね、あなたが飛び降りた真下に、』
『奇跡的に茂みがあったのよ。』
茂み…か…
たった一つの草に生殺与奪の件を水の泡にされたのか。
情けないなぁ…
「スマイルッ…二度とこんなことしないでッ…!」
「俺ッ…スマイルが死んだらッ…」
そんな顔しないで。
わからない、
なぜ泣いてるんだ?
彼にとって害は何もないのに。
「二度とッ…こんな無茶なことしないで…」
「約束してよッ…スマイルッ…」
「自分が認められないならッ…!」
「俺のためにッ…生きてよッ…」
その言葉には何ともいえない重みがあって、今の俺の人生に、生きる価値を示してくれるようだった。
「俺はスマイルのお陰で毎日が楽しくなったッ…!」
「なのにッ…」
「1人でどっか行かないでよッ…!!」
彼は声を荒げた。
その声は、怒っているはずなのに、不思議と温かかった。
『こら、なかむ、スマイル君はケガをしているのよ?』
『そうだ、少し頭を冷やしてきなさい。』
「でもッ…!」
『あなたの気持ちもわかるけど、今は休ませてあげて』
「っ…」
また、大切なものを失ってしまうところだった。
誰のせいでもない。
運命なんかじゃない。
自分で、それを捨てようとしていた。
彼は、誰よりも俺を必要としてくれて、
誰よりも俺に「愛を注いでくれた人」かもしれない。
「ご、めん…」
そこから、俺の人生はガラリと変わった。
退院後、やはり飛び降りた代償は大きく、ある程度の後遺症は残ってしまうらしい。
でも、運良く、生活に支障はきたさない程度の後遺症だった。
もしかして、それが神が俺にくれた最後の希望なのかもしれない。
でも、一つだけ問題があった。
「…なかむ、」
「……っ…、」
そう、あの日から彼とすれ違うようになってしまった。
そりゃそうだろう。
あの日、自ら彼を投げ捨て、挙句の果てには彼の気持ちなんか考えずに飛び降りてしまったのだから。
こんな俺には当然の罰だ。
でも、どうしてだろう。
胸がとても痛む。
彼を切り離したのも、彼に他の人と親しくしてほしいと願ったのも、誰でもない俺自身のはずなのに。
なかむ、ごめん。
…神様、どうか、どうかまだ慈悲をいただけるのなら、
彼を、なかむを、
他の誰よりも幸せにしていただけませんか。