テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ショコラ@男化or「にゃん♡」
708
3,127
207
stpr 水赤 様 iris 桃様 青様
誤字脱字注意
日本語おかしい
こちらの作品は、夏ベリーさんとの合作の前編となっております!
後編も見てみてください
夏ベリーさんは綺麗な文章の書き方をされ
る素敵なお方です、もし 読んだことがない
のであれば是非読んでみてください!!
芸能事務所の会議室。
レコーディング終わりの夕方。
ソファに腰掛けたこえは、ぐったりと背もたれに体重を預けていた。
「つかれたぁ……」
「お疲れ様」
向かいに座るないこが缶コーヒーを差し出す。
「ありがと、ないこくん」
受け取ろうとした瞬間。
「あー、待って」
ひょい、とないこがプルタブを開けてから渡してきた。
こえは首を傾げた。
「……?」
「開けるの面倒でしょ」
「いや、ちむ自分で開けられるけど」
「知ってる」
にこ。
爽やかな笑顔。
その横で英語の資料を見ていたいふも笑う。
「ないこはこえに甘いからな」
「いふくんまで」
「ほら」
いふが机の上のチョコを差し出した。
「糖分補給」
「え、ありがとう」
「口開けて」
「え?」
「ほら」
「いやいやいや!」
こえが慌てる。
ないこといふは顔を見合わせて笑った。
「反応が面白い」
「いじりがいあるんだよな」
「もう!」
こえは頬を膨らませた。
その様子を会議室の隅で見ていたれるは、パソコンから顔を上げる。
別に。
いつものことだ。
ないこもいふもこえを弟みたいに可愛がっている。
こえはしっかり者だが、たまに天然で抜けているところがある。
放っておけない。
だから周囲から甘やかされる。
それだけ。
別に気にすることではない。
……ないのだが。
「そういえばさ」
こえがぽつりと言った。
「ん?」
「ないこくんもいふくんも、めっちゃ姫扱いしてくれるよね」
れるの指が止まった。
嫌な予感がした。
「そうか?」
「してるしてる」
「まあ可愛い同期だからな」
いふが笑う。
こえも笑った。
そして。
何気なく。
本当に何気なく。
言った。
「れるはあんまり姫扱いしてくれないよね」
沈黙。
ぴたり。
空気が止まる。
ないこが目を逸らした。
いふが吹き出しそうになる。
れるはゆっくり顔を上げた。
「……は?」
こえは気付いていない。
「え?」
「今なんて?」
「だかられるは――」
「聞こえとる」
れるは眉をひそめた。
は?
姫扱いしてない?
誰が?
れるが?
意味が分からない。
普段から十分優しくしている。
こえが徹夜したら差し入れを持っていく。
体調が悪そうなら帰らせる。
寒そうなら上着を貸す。
好きな飲み物も把握している。
荷物も持つ。
送迎もする。
何ならライブの日は緊張してないか確認までしている。
十分やろ。
むしろ多いくらいやろ。
「……姫扱いしてへん?」
「うん」
声はあっけらかんと言った。
「優しいけど普通じゃない?」
ないこが咳払いした。
いふが天井を見た。
れるの額に青筋が浮いた。
「普通」
「うん」
「そうか」
「うん」
「なるほどな」
れるは立ち上がった。
にっこり。
怖いくらい綺麗な笑顔だった。
「わかった」
「え?」
「教えたる」
「何を?」
「姫扱いっちゅうもんを」
ぞわり。
なぜかこえの背筋に悪寒が走った。
翌日。
朝。
事務所。
こえはエレベーターを降りた。
すると。
目の前にれるがいた。
「おはよ」
「おはよ」
いつも通り。
そう思った瞬間。
れるが手を差し出した。
「荷物」
「え?」
「持つ」
「いや大丈夫」
「持つ」
有無を言わせない。
バッグを奪われた。
「ちょ、れる」
「姫は荷物持たへんやろ」
「は?」
れるは真顔だった。
嫌な予感しかしない。
スタジオへ向かう途中。
「自販機寄る?」
れるが聞く。
「うん」
こえが財布を出そうとした。
しかし。
その前にれるが買っていた。
「はい」
「え?」
「いちごミルク」
「なんで」
「好きやろ」
「お金――」
「ええよ」
「いや」
「姫に払わせるわけないやん」
「待って」
れるは歩き出す。
こえは慌てて追いかけた。
なんかおかしい。
絶対おかしい。
昼。
休憩。
こえが立ち上がろうとすると。
れるも立つ。
「何?」
「どこ行くん」
「コンビニ」
「一人で?」
「うん」
「危ない」
「危なくない」
「れるも行く」
「なんで」
「姫やから」
「その設定まだ続いてるの!?」
れるは本気だった。
周囲の人たちは面白そうに見ている。
やめてほしい。
本当に。
そして極めつけは夕方だった。
レッスン終わり。
疲れたこえがソファに沈む。
「つかれた……」
その瞬間。
れるがペットボトルを差し出した。
「飲む?」
「ありがとう」
受け取ろうとした。
だが。
れるは渡さない。
「れる?」
「ほら」
ペットボトルを傾ける。
「飲ませたる」
「はあ!?」
会議室が爆笑に包まれた。
「れるちおもろ」
「やば」
「本気じゃん」
声の顔が真っ赤になる。
「自分で飲める!!」
「姫やろ?」
「違う!!」
「昨日言うてたやん」
「そういう意味じゃない!」
れるはふんと鼻を鳴らした。
「文句言うな」
「言うよ!!」
ないこが肩を震わせている。
いふは完全に笑っていた。
「れる、拗ねてる」
「拗ねてへん」
「拗ねてるじゃん」
「拗ねてへん」
「こえに姫扱いしてないって言われたから」
「ちゃう」
図星だった。
夜。
みんなが帰った後。
事務所の廊下。
こえは一人で歩いていた。
すると。
後ろから足音が近付く。
「こえ」
振り返る。
れるだった。
「帰るん?」
「うん」
「送る」
「大丈夫」
「送る」
「だから――」
「夜やぞ」
れるは眉を寄せる。
いつもの顔だった。
からかっている時の顔ではない。
本気で心配している顔。
こえは少しだけ黙った。
昔からそうだ。
れるは優しい。
自分では気付いていないだけで。
ずっと。
誰よりも。
「……れるってさ」
「ん?」
「優しいよね」
れるが固まった。
「は?」
「だから」
「急になんやねん」
「別に」
こえは笑った。
本当は言いたかった。
昨日の言葉は。
そんな意味じゃなかったと。
れるが優しくないなんて思ったことは一度もない。
むしろ。
優しすぎて困るくらいだ。
だけど。
違う。
自分が欲しかったのは。
そういうことじゃなくて。
もっと。
特別な。
好きな人に向けるような――
そこまで考えて。
こえは慌てて思考を止めた。
何考えてるんだ。
れるは自分のことなんて好きじゃない。
ただ仲間だから。
大事なメンバーだから。
それだけ。
そう。
それだけ。
一方で。
れるもまた同じことを考えていた。
隣を歩くこえを見る。
可愛い。
今さら認めるのも癪だが可愛い。
笑う顔も。
照れる顔も。
困る顔も。
全部。
好きだ。
だから優しくしてしまう。
だから甘やかしてしまう。
だから心配になる。
なのに。
本人は気付いていない。
たぶん一生気付かない。
だってこえは。
ないこにもいふにも懐いているし。
誰にでも優しいし。
自分なんか。
ただの仲間だと思っているだろうから。
「……はぁ」
「何?」
「なんでもない」
れるは前を向いた。
言えるわけがない。
好きだなんて。
もし嫌われたら。
今の距離すら失う。
そんなの耐えられない。
だから。
このままでいい。
……そう思っていた。
その時だった。
事務所の入り口付近で。
他のグループのメンバーの会話が聞こえた。
「あれ絶対付き合ってるよな」
「分かる」
「むしろ付き合ってない方がおかしい」
「夫婦じゃん」
こえとれるは同時に固まった。
「……」
「……」
沈黙。
数秒後。
二人は同時に反対方向を向いた。
耳まで真っ赤になりながら。
(付き合ってない!!!)
(付き合ってへん!!!)
見事に同じことを考えながら。
――だが。
二人とも知らない。
明日かられるの「姫扱い」がさらに加速することを。
そして。
そのせいで。
二人の関係が大きく動き始めることを。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!