テラーノベル
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スマホの画面に表示される小さな光点。
それが元貴の居場所を示している。
藤澤はベッドの上に寝転び、その赤い光を指先でなぞりながら、口元にゆっくりと笑みを浮かべていた。
「……元貴、今日はここか」
誕生日に渡した紅い指輪。
メンバーカラーを意識したプレゼントに、元貴は嬉しそうに笑って受け取った。
その笑顔を思い出すだけで、藤澤は胸がじんわりと温まる。
だが同時に、胃の奥から湧き上がるような熱が全身を駆け巡る。
――この指輪がある限り、元貴のすべては俺のものだ。
⸻
夕方。
GPSの点は、都内の人気カフェで止まった。
「ふぅん……カフェか」
藤澤はスピーカーを軽く指で叩き、盗聴をオンにした。
「元貴くん、相変わらず元気だね」
聞こえてきたのはスタッフの声。
「いやいや、そんなことないですよ。昨日も寝落ちしちゃって……」
元貴の笑い声が響いた瞬間、藤澤の胸がギュッと締め付けられる。
笑っている。
しかも、他の誰かに。
若井の声が重なったときには、心臓が一気に熱を帯びた。
「このあとどうする? 楽器屋寄ってく?」
「いいね! ちょっと新しいエフェクターも気になってて」
楽しそうな二人の声。
藤澤は、耳を澄ませる自分がどれほど嫉妬に染まっているのか、わかっていた。
それでもやめられない。
「……若井か」
指先が強くスマホを握りしめる。
心の奥で「元貴を独り占めしたい」という欲望がさらに膨らんでいった。
⸻
夜。
帰宅した元貴が自宅マンションに入ったのを確認し、GPSはしばらく一点に留まった。
安心感と同時に、妙な昂ぶりが喉を焼く。
「……全部、わかっちゃうんだよな」
藤澤はスマホを枕元に置き、目を閉じた。
頭の中では、今日一日の元貴の行動が映画のように流れていく。
カフェで笑う顔、若井と談笑する横顔、マンションへ戻る背中。
全てが記録され、再生される。
――これでいい。
まだ触れてはいない。
けれど、すでに支配は始まっている。
⸻
次の日。
リハーサル前に元貴と顔を合わせた。
「おはよ、涼ちゃん!」
爽やかな声。
昨日も若井と楽しそうに笑っていたのに、藤澤を見るその笑顔は変わらない。
「昨日、カフェ行ったんだろ?」
思わず口から漏れた。
「あれ、美味しかった?」
一瞬、元貴の表情が固まった。
「……え、なんで知ってんの?」
胸の奥がひやりとしたが、藤澤はすぐに柔らかく笑った。
「え? 前に行きたいって言ってただろ? だから行ったのかなーって思っただけ」
「……あぁ、そっか。そうだったな」
元貴は違和感を飲み込み、笑い返した。
藤澤はその笑顔を見ながら、心の中で静かに囁く。
――お前の行動も、声も、笑顔も。全部俺だけのものだ。
⸻
リハーサルが始まっても、藤澤の心は別のリズムを刻んでいた。
元貴の指輪が光るたび、自分の胸の奥にある「所有欲」が静かに満たされていく。
それは、もはや演奏のリズムよりも確かで強いものになりつつあった。
(……早く奪いたいなぁ。元貴の全部。)
藤澤の目に浮かぶ微笑は、周囲には優しく映る。
だがその奥には、冷たく熱い支配欲が燃え続けていた。
――GPSの観察は、支配へのほんの序章にすぎなかった。
コメント
2件
GPSが序盤!?そのほかは...思いつかない!