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霧の奥で、
金属が軋むような低い振動が響いた。
採掘団の“魔術機械”が、
結界の外側で稼働を始めた音。
ジェイアスは腰の護符に触れ、
その反応を確かめるように指先でなぞった。
剣ではなく、
彼が扱うのは結界の補助具と感知の術式。
「……来る。
結界が押し込まれている」
エリスは胸の奥を押さえた。
核との繋がりが、
さらに細くなる。
「採掘団の魔術……
共鳴を乱しています……
このままでは……」
足元が揺れ、
エリスの身体が傾く。
ジェイアスはすぐに支えた。
剣ではなく、
彼自身の身体で守るように。
「無理するな。
奴らの術式は“核の波長”を狙っている。
お前が弱るのは当然だ」
霧の奥で、
結界の表面が光を散らした。
外側から叩きつけられる魔術と機械の圧力が、
森全体に響いている。
「……結界が……
ひとつ、破れました……」
エリスの声が震える。
ジェイアスは護符を握りしめ、
結界の補助術式を展開した。
「侵入される前に止める。
神器を奪われたら終わりだ」
その瞬間、
結界の外側で光が弾けた。
採掘団が、
ついに“核への侵攻”を本格的に始めた。
森が低く軋むように揺れた。
結界の表面が、
ひときわ鋭い光を散らした。
次の瞬間──
外側から叩きつけられた魔術機械の衝撃が、
結界の一部を“抉るように”破った。
空気が裂け、
森の奥へ冷たい風が流れ込む。
エリスは胸を押さえた。
「……侵入されました……
結界の第三層……消失……」
声が震える。
核との繋がりが、
一気に細くなったからだ。
ジェイアスは護符を展開し、
侵入口へ向けて術式を走らせた。
「先遣隊が来る。
エリス、下がれ」
だがエリスは首を振った。
核の波が乱れ、
意識が揺らぎ始めている。
「……このままでは……
核が……崩れます……
繋ぎ止めるには……
鏡の……前段階を……」
彼女の指先が震え、
巫女の鏡が淡く光を帯びる。
禁術の“入口”──
本来なら触れてはならない領域。
それでも、
核を守るためには必要だった。
ジェイアスは侵入口へ視線を向ける。
霧の裂け目から、
採掘団の先遣隊が姿を現した。
魔術機械の光を背負い、
結界を破った余波をまとった兵たち。
ジェイアスは護符を構え、
術式を重ねる。
「来るなら来い。
ここは通さない」
その瞬間──
森の深部が、
低く、重く、震えた。
地面ではない。
木々でもない。
核そのものが“現象として”揺れた。
エリスの身体が大きく傾く。
「……核が……警告を……
こんな揺れ……初めて……」
ジェイアスは彼女を支えながら、
侵入してくる先遣隊へ術式を放つ。
結界の破れ目から、
さらに強い魔術機械の光が差し込む。
森は軋み、
核は揺れ、
侵入者は迫り、
鏡は禁術の光を帯び始める。
すべてが同時に、
崩れ落ちるように動き始めていた。