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私の全てを狂わせたあの日はなんの前触れもなく訪れた。
朝のHRで涙ながらに担任が伝えたクラスメイトの自決。
原因はクラスで起こったいじめだった。
今どき、いじめだなんて対して珍しいくもないこと。それによる自決も同じように、この国にはありふれた現象だったのでしょう。
それ故か自決のニュースを聞く度に、「ああ、可哀想だ」だの「なんて酷いことだ」なんて形だけの同情を口から零していた。
でも、それがいざ目の前に起こってみるとそんな客観的な意見は引っ込んでしまうものだ。
経験者は語るって、このこと。
葬儀の日、ちっぽけな骨壷と化してしまった彼女を見て、私達は久方ぶりに言葉を交わした。
いじめの主犯である、私の友達と。
「ねぇ、真宵さん」
「……何?」
喪服に身を包んだ彼女に声をかけた。
「私たちの犯した罪は…一生許されることはないよ」
「……私、たち?何言ってるの?」
驚いて、同じ言葉を繰り返す彼女。
そんな彼女の顔は不快そうに、悲しそうに歪んでいた。
「透海のせいじゃないよ、私のせい
透海は、何もしなてかったじゃん」
「うん、そう…“何もしなかった”
真宵さん達が吐く罵詈雑言を、振るった暴力も…」
ぎゅっと唇を噛む彼女を前に、こう続ける
「何もしないで見てた。私も同罪。」
まだ何か言いたげな彼女を置いて、私はその会場を後にした。
**
鮮やかな橙色が夕方の屋上を照らした。
溢れ出る自己嫌悪に任せて蹴り破ったドア背に、人生最後の景色を目に焼きつける。
学校の備品を壊してもすぐには見つからないらしい。
最後くらい劇的に、ドラマチックに終わりたいじゃない。
少しだけ、時間をちょうだい。神様とやら。
目を閉じて思い出すのは、教室に響く怒鳴り声と笑い声。
毎日毎日、よく飽きないものだ、と他人事のように見て見ぬふりをした私。
仮にも私の旧友がいじめられているのだ。彼女の友人になり、助けるなり、大人に助けを求めるなりすればよかったのだ。
でも、私はそれをしなかった。「傍観者」を貫き、助けようともしなかった。
ー私にね…挨拶、して欲しいの…無視しないで、私に挨拶して…そうしたら私、学校行けるよ
いつかの彼女の言葉。
果たされなかった約束。
失望したような、全てに絶望したような、彼女の瞳。そして、怒りに満ちた彼女の“呪詛”
もうすぐ終演を迎える、私の可哀想な哀愁劇。
幕切れはドラマチックな雰囲気の漂う屋上で。
カーテンコールなんてない。
さようなら、大嫌いな私。
さようなら、大嫌いな世界。
これで、全部おわれる。