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「__この子って…まさか、」
うるさい、私はまだ寝るの。
最悪なことに、私まだ生きてるみたいだし…
もう二度と学校になんて行かない。
そこまで考えたところで、少しの違和感を覚える。
ちょっと待って、何かがおかしいわ。
言葉に出来ない違和感が、頭をぐるぐると回る。
「えっと、お嬢さん…生きてる…?」
“お嬢さん”ですって? 誰、そんなふうに私を呼んだのは。
からかってるの?死ぬ事が出来なかった私を嘲笑おうっていうの?
思いっきり頭を上げて、相手を睨みつけようとすると、小さなうめき声と共に頭に何か硬いものが当たった。
頭に鈍い痛みが残る。
「う、何するんだよ…」
目の前で痛そうに鼻を抑えるのは、人間離れした毛色を持った男だった。
頭には、アニメでしか見ないような耳と尻尾。
目の前の異様な光景に、動けなくなる。
「こんにちは、君新しい転生者、かな?」
少し警戒したような様子で手を差し出す彼は
強張った笑顔を浮かべた。
無言で差し出された手に手を重ねる。
「君、名前は?」
「…とうか」
「そっか、いい名前だね。僕、ハルカ。
よろしくね。」
「……」
なんだ、これは。
疑うことも無く手を差し出した私を殴ってやりたい。
胃から迫り上がる不快感を抑えながら、周りをぐるりと見回してみる。
絵本から出てきたような西洋の街、この表現が最も適当であろうこの景色は、私の生きた現代社会とはまるで違う。ビルのひとつも見つからない。
絵に書いたような「異世界」
RPGの序盤の村、陽気な笛の音が響いてきそうな風景である。
「えーっと、そうだよね。こんな所に来たのは初めてだろうしね。街を一通り案内するよ」
「は、はぁ」
街案内の間、私は上の空で彼の言っていることなど耳に入ってこなかった。
よく分からない世界に飛ばされたこと、きっとこれは夢では無いこと、もうあの世界には帰れそうにないこと。(帰りたくもないけど)
誰に言われたわけでもないし、なんの根拠もないのだけど、体はそう感じ取っていた。
絶望感とこれから先への不安に駆られながら、ただハルカの後をついて行った。
「そ、それで…此処が君の家だよ!
多分、そこまで古くないし…ちょっと前まで人が住んでいたからね。 君も大丈夫だと思うよ、」
「……ありがとう、 ございます。」
「いいんだよ、 気にしないで。
僕、 もう君の友達だからさ。」
そい言うとハルカは私に向かって優しく微笑んだ。
「用事があるから」ということで反対の方へと向かってしまったハルカに取り残されて、一人ポツンと新しい「我が家」を眺める。
せっかく転生してきたのなら、ここでは上手くやろうじゃない。
私はもうあの頃の私とは違う、誰も私を知らない。なんの価値もない、「普通」の私じゃないの。
こうして、私の異世界生活は始まった。