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ワンクッション
教師パロです。
英語教師❤️と体育教師💙さん
(教科名出てきません)
それでもいいよーという方はお進みください
カラン、と氷の音が響く。初めに声をかけたのは、どちらからだっただろうか。机の上で溶けゆく氷を見つめながら、ふと思いを巡らせる。騒がしい居酒屋の喧騒と、それには不釣り合いな彼の横顔。
「……俺、前まで佐野さんが好きやったんや。そやのに、あの人は俺以外と幸せになって……落ち込んでた」
カシスオレンジの空きグラスという、なんとも質素な楽器で彼は音を奏でる。軽快な音のはずなのに、彼の告白を聞いていると、どうしようもなく虚しさが募る。
「そやけどそんな中、曽野先生が支えてくれて……、そのおかげで俺、今も教師続けられてるんや。そやさけ感謝してんで、曽野先生には」
彼はグラスを机に置くと、俺の肩に重みを預けてきた。俺が纏っている香水の匂いが彼に移り、俺たちがそういう仲だと周囲に知れ渡ればいいのに。そんな、どうしようもなく黒い独占欲を抱き、俺はそれを苦味とともに飲み込んだ。グラスの音は未だ軽快に響いている。
「俺も塩﨑先生に毎日元気を貰うとったで、そのお返しや。……せやけどまだ少しだけお返しが足らん。だからさせてくれやんかな?」
いつの間にかそんなことを口走っていて、自分でも驚いてしまった。けれど、これくらいならまだ、きっと大丈夫なはずだ。
「お返しが足らんて……十分すぎるくらいしてもろてるのに。そやけどそっちが足らんて感じるならして欲しいな」
彼は内容を理解していないような、あどけない顔で言う。その無防備さが、どれほど俺を狂わせていることか! だが、何処か笑顔が自然過ぎるような気もするのだ。普通、失恋した直後なのだから、もう少し落ち込んでてもいいはずだ。
「……今にでもキスしたい、触れたい」
「……曽野先生? ……急にどうしたん? キスしたいとか言い出して」
しまった、口に出ていたか。どうしよう、どうやって誤魔化そうか。焦る俺の手を、不意に塩﨑先生が握った。
「……あんなに好きみたいな目してたのに、俺以外がええの?」
理解が追いつかない。どうして、なぜ? そんな言葉が返ってくるとは思ってもみなくて、すべてが予想外だった。
「そんなわけあらへん!! 俺はずっと塩﨑先生のこと好きで……!!」
俺は握り返す力を強くする。決して、彼を逃がさないように。彼はそんな俺の様子を見て、耳を赤らめた。それでもう、お互い止められないなと確信した。仕切りなんてない飲食店、どちらからともなくその喧騒に呑まれながら、格好悪いキスを交わす。一回、二回、唇を重ねる毎に彼の息が、唾液が俺に溶けていく。
「……あれ太智、なにしてんの?」
ふとそんな声が二人きりの世界を止めた。視線をやると、そこには佐野先生がいた。
「あー大丈夫だよ、キスしてたのは伝わってるから。それで……太智、付き合ったなら報告しろって言ったじゃん。相談乗ってやってたんだからさ」
「ちょっと!! それ言わんといてや!! ……勇斗のこと好きってことにして曽野先生に相談してたんやさけさ!!」
一瞬体が固まる。嘘なんてつけませんよという雰囲気だったのに。その無防備さも、笑顔も計算の上だったのか? そんな考えにたどり着いてしまい、思わずゾッとする。だが、もう俺は逃げられない。俺が彼を逃がさないように手を握ったのと同じように、彼も俺を思い切り抱きしめているからだ。
「俺のことダシにして付き合った挙句目の前でイチャイチャしてんの!? だいぶ勇気あるな!?」
そう佐野先生が茶化すように言う。塩﨑先生には申し訳ないが、それには俺も同感だ。
「あー!! 急になんも聞こえやんくなったなぁ、ってことで往のう!曽野先生!」
お会計はよろしく! とでも言うかのように佐野先生に伝票を渡し、塩﨑先生は手を引いてきた。先程まで抱きしめられていたはずなのに、なぜ俺は今立っているんだ?! と脳が一瞬追いつかなるほど逃げ足が早い。先程までの雰囲気はどこへやら、二人で馬車にも乗らずに町をかけた。体温を互いに感じながら。
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コメント
2件
は、、あ、もう最高。神。 やば大好きすぎます…🫶🫶🫶🫶 好きすぎて泣きそうです