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お初にお目にかかります。鯵です。初めてなんでお手柔らかにお願いします。それでは
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(やばいやばい。どうしよう……)
私の名前は鈴音(すずね)。華の10代の半分を既に推しに捧げた、いわゆるオタクである。鈴を転がしたようにコロコロと笑うことから付けられた名前とは正反対の陰キャとして教室の隅にうずくまりながら過ごした長い長い中学校生活が終わり、高校デビューを狙って今か今かと臨んだ入学式……のはずが、それどころではない事態となってしまった。
話は1時間前に遡る。
前日にどんなに寝たとしても絶対に眠くなる伝説の睡眠魔法こと校長先生の話を、右から左に聞き流す必殺のちくわ大明神で眠気を何とか堪え、頭の中でシュミレーションを繰り返して臨んだ最初の自己紹介がついに始まった。第一印象が八割を占めるとどっかの誰かさんが言っていたのを思い出し、笑顔をつくる。ダメだ。多分めっちゃ引きつってる……。とか考えてるうちに自己紹介は副島まで進んでいた。次はなんだあれ。小鳥が遊ぶ?よく分からん……
「小鳥遊 遥(たかなしはるか)です。よろしくお願いします」
「は?!」
思わず口に出ちゃった……どころじゃない。思いっきり立ち上がって叫んでしまった。みんなの視線が痛い。高校デビュー失敗。こんな事態に頭は全く別のことを考えている。まぁそれもそうだ。
なんで!?なんでこんな所に?!愛しの春香様が!?てかリアルでも可愛いすぎ…………
「どうかしましたか 」
「あ、いえ……なんでも……あはは……」
先生の言葉で我に返り、恥ずかしさと後悔で泣きそうになる。さらば念願の高校デビューよ……。お前とはもう二度と会うことは無いだろう……。みんなの視線が怖くて顔を上げられない……。やめてそんなに見ないで……。恐る恐る顔を上げると春香様がこっちを見ている。あぁもぉなんだよそのキョトン顔は〜。かわいい罪で逮捕しよう。そして全世界に知らしめるのだ。小野町春香様というお方の尊さを。
「えぇそれでは次に行きましょう。」
「私は───────」
自己紹介は再開されたが、見事なまでの高校デビュー失敗を果たした私にとってはもうそんなことどうでもいい。推しがいるのだ。同じ学校しかもおんなじクラスに。オタクなら誰しも一度は考えたはずのシチュエーションに遭遇したのだ。高校デビュー失敗?そんなこと関係ない。推しがクラスにいる。それだけでもう勝ち組だろう。一軍だの陽キャだのにはもう興味は無い。そんな事しなくても人生の勝ち組なのだ。まずは連絡先から…
「じゃあ次」
「……あっ、はい」
先生に呼ばれて次が自分の番であることにようやく気づき、慌てて立ち上がる。やばい。春香様のこと考えてたら原稿全部飛んだ……。やばいやばい。どうしよう……。もういいや───
「私は本郷鈴音(ほんごうすずね)と言います。趣味は推し活で最推しはにじさんじの小野町春香様です。よろしくお願いします」
───やってやった。この自己紹介じゃ陰キャは確定だろう。しかし既にやらかした私に怖いものは無い。精神にATフィールドが展開されているのだ。既に去っていった高校デビューに未練は……ないことにしてまずは最も重要なことを確認する。それは«本当に春香様なのか»、ということである。これが確認できなければただのヤベー奴で終わる確率が跳ね上がる。いくら配信を全部見ているとは言っても私も人間。聞き間違えることもあるだろう。推しの声を間違えたとなればオタクとしての地位さえ怪しくなってしまうだろうが……
そんなことは置いておいて、本人確認をバレずに行う為に1つの手を打った。それが先程の自己紹介である。【にじさんじ】【最推し】【小野町春香】
本人ならばこの3つのワードに反応しないはずは無い。結果は本人確認成功だった。ピクッとしてちょっと表情が固まっていた。一瞬の出来事故、私でなければ見逃していたな。冗談はさておき、これで春香様本人であることは間違いない。なんてしているうちに自己紹介は終わり、休み時間に突入していた。クラスメイトたちはそれぞれ思い思いに立ち歩き、話していた。当然私のところには誰も来ないだろう……と思い私はさっさと次の授業の準備をすませ、机に突っ伏し睡眠に入ろうとしていたところ
「ねぇ。ちょっといい?」
声をかけられた。しかも春香様から。
そんなこんなで今に至る。
(やばいやばい。どうしよう……)
完全に失念していた。そりゃそうだ。春香様からしてみれば自分の自己紹介で急に声を上げたり、自分のことを最推しだと言ったり不審なところが多すぎる。しかも正体もバレているのだから。とりあえず正体を知っていることだけは隠さないと……
「私のこと知ってるんでしょ?」
耳元でそんなこと言わないで〜///
「ヒゥゥ。いや……小野町春香様のことなんて……知りません……」
「小野町になってるよ。可愛いね」
「あっ、いやっ……これは……その……」
やらかしたーーー
「2人だけのひ・み・つ。ね?」
「はっ、ひゃいっ……」
ズルい……。やはり尊すぎる。こんなのどこのオタクなら耐えられるというのか……。
キーンコーンカーンコーン
「チャイムなっちゃったね。そろそろ起きなきゃダメだよ」
「はっ!?」
なんだ、夢か……。まぁそんなことあるわけないよな……。それにしても、必殺のちくわ大明神をもってしても寝てしまうとは。校長先生の話…末恐ろしいな……。
「新入生代表の挨拶。小鳥遊遥」
ん?なんか聞き覚えが……
「はい」
「へ!?」
あ……。またやった……。
まぁいいか。
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お疲れ様でした。鯵です。初めてとはいえ、このような駄作、お読みさせてしまい申し訳ございませんでした。
それではまたいつか……