TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

:D ream C0RE

一覧ページ

「:D ream C0RE」のメインビジュアル

:D ream C0RE

15 - 第15話 ナイトメアヴァイン

♥

33

2025年06月07日

シェアするシェアする
報告する

無機質な声を発する機械生命体――《観測者》は、静かに語りはじめた。
「ドリームコア。それは現実から“分離”したもうひとつの地球。誤って作られた、しかし決して“捨てられなかった”世界だ」


「分離……?」

リクが眉をひそめると、《観測者》は空中にホログラムを映し出す。


そこには二重に重なった地球のような球体。片方は現実世界、もう片方は奇妙な歪みを含んだ世界――ドリームコア。


「実験名:Project Ω(オメガ)。空間生成装置により、新しい生存圏を創造する計画。しかし装置は過剰に稼働し、既存の地球空間と重複。結果、“分離”が発生した」


アイビーがぽかんと口を開けた。

「それって……人が、別の世界に引きずり込まれちゃったってこと……?」


「正確には、“選ばれた”。あなたたちは、消去されるはずだった世界で、なお生き残った存在だ」


その言葉に、リクの心がざわついた。


「じゃあ……元の世界に戻る方法は?」


《観測者》は沈黙した。そして、こう答える。


「方法は存在する。ただし、その鍵は《果実》にある。ドリームコアの最奥、天を裂く塔の頂にて眠るものだ」


「……果実……?」


その言葉にだけは、なぜかロビンが反応した。

普段感情をあまり見せない彼が、少しだけ顔をしかめた。


「聞イタ、コト、アル……。昔、ここ来ル前ニ……」


その時、施設全体が揺れた。

上空から――黒い触手のような影が落ちてくる。


《観測者》が警告を発する。


「敵性クリーチャー《ナイトメア・ヴァイン》接近。交戦準備を推奨。ログアウト不可」


「来たか……ッ!」


リクは拳を握りしめた。

「今度こそ、逃げない……!」


今、過去の過ちと正面から向き合う戦いが始まる――!


「……なんだこれ。森でもないのに、植物……?」


乾いた砂の大地のはずなのに、リクの足元に黒紫色の蔓がぬるりと絡みついていた。

目を凝らすと、周囲の砂地からいくつもの蔓が蠢いている。


「ちょっ、やだ! これ、気持ち悪いっ!」


アイビーが叫びながら飛び退いたが、逃れ切れずに足首を一瞬で取られる。


「アイビーッ!」


リクが駆け寄ろうとしたそのとき、背後からいきなりロビンの声が飛んだ。


「動クナ。……オレ、撃ツ!」


風を切る音とともに、ロビンの矢が蔓を貫く。分裂矢が四方に飛び、次々と蔓を断ち切っていく――が。


「うそ……全然減ってない!」


アイビーが叫ぶ。切り落としたはずの蔓が、黒い霧を纏って再生していくのだ。


リクはすぐに叫んだ。


「分析!!」



解析結果

 • 個体名:ナイトメアヴァイン

 • 種族:擬似生態型悪夢捕食植物

 • HP:8,900(本体) / 蔓1本あたり:150

 • スキル:夢喰い・再生・感情感知

 • 弱点:強い光 / 中枢部は地中深くに存在

 • 備考:睡眠・恐怖・不安などの負の感情をエネルギー源とする。触れた相手に幻覚を与える。



「……感情感知……幻覚……!」


リクが顔をしかめた瞬間、蔓が絡みついたロビンの足元から、黒い靄のような影が上がる。


「やベェ……気持ち、ヘン。……コレ、マズイ」


ロビンの声に覇気がなくなり、目の焦点が外れていく。


「アイビー! ロビンを起こして! 俺、あいつの本体を――!」


リクは閃いたスキル“分析”の応用を使いながら、地面に向かって叫ぶ。


「そこかっ!!」


地面に走り込んで、再構築した分析データから導いた一点に短剣を突き立てる。

すると、大地が揺れ、巨大な黒紫の花弁のような口が砂から姿を現した。


「やっぱり本体はこっちかよッ!」


リクは短剣を深く突き立てた。

砂の中から咆哮のような轟きが響くと、ナイトメアヴァインの巨大な本体が砂を弾き飛ばして現れる。禍々しい花弁のような口が開き、中心にはうごめく黒い瞳があった。


「気持ち悪……」


アイビーが震えながら言うが、表情はもう恐れていない。すでに冷静さを取り戻していた。


「リク! 今よ!」


「ロビン、いけるか!?」


「……いけル。爆裂矢、込メル」


ロビンは震える手で矢を引いた。弦が悲鳴のように唸る。そして。


「撃ッ!!」


放たれた矢は途中で三本に分裂し、本体の花弁を固定するように突き刺さった。

次の瞬間――


ドォン!!!


耳をつんざく爆音とともに、爆裂矢が炸裂。本体の中枢が露出し、うねりながら悶え始める。


「いまだ! アイビー!」


「うんっ!」


アイビーは自分のスキル――強度増幅を両足に集中させ、跳ねるように駆け出した。


「とおおおおっ!!!」


そのまま宙を蹴り、中枢の黒い瞳に――拳を叩き込んだ!


「──!」


音もなく、黒い目玉がひび割れ、ナイトメアヴァインの全ての蔓がぐったりと崩れ落ちる。


砂煙が舞い、静寂が戻った。



「あっつ……なにこれ……」


リクの手元に、蔓の根元から出てきた紫色に光る欠片が転がっていた。


「また、XP?」


アイビーが顔を覗き込む。ロビンが頷く。


「オマエラ、拾エ。……キット、得ルモノ、アル」


リクとアイビーが触れると、またあの機械的な声が脳内に響く。



取得スキル

 • リク:「記憶干渉(メモリー・リンク)」を取得しました

 対象に触れることで、その者の記憶の一部を映像として再生することができる。

 • アイビー:「自己修復(セルフ・リカバリー)」を取得しました

 一定時間ごとに、自動で軽度の傷を回復する能力。



「記憶……干渉……?」


リクは不安げに欠片を見つめる。


「触った相手の記憶が見れるってこと? そんなこと、俺に必要か……?」


そのとき。ふと、蔓の残骸の中に、何かが埋もれているのが目に入った。


「……ん? これ、なにかの……扉?」


砂を掘り返すと、石の台座と扉らしきものが現れた。そこには、古代文字でこう刻まれていた。



「アルカディア、深部への道。

選ばれし者のみが、果実に触れる資格を持つ」



リクたちは顔を見合わせた。


「果実……? なんだ、それ」


ロビンの目が細くなった。


「ソレ……キイテハ、イケナイ。禁忌ノ、話ダ」


空気が変わる。


リクは、手のひらの記憶干渉スキルをそっと握りしめた。


「行こう。先に進まないと、何もわからない」

loading

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚