大切なもの
「うぇん」
低く、落ち着いた声、いわゆるイケボ、とやらに呼ばれた。
その声の持ち主は、僕と同じヒーローであり、僕の同期であり、
そして、恋人でもある、小柳ロウの声だった。
静かな空間…、とまではいかないが、いつもよりも幾分か
静かだった空間に、普段なら聞き取れない低い声は 大きく聞こえた。
「なぁに」
僕のすこし、甘えたな、恋人にしか向けない、特別な声に
ロウは苦笑いすると、優しく頭を触れてきた。
僕はソファに座るロウの足元に居るわけで、頭も撫でやすいとは
思うが、普段しない行動に少し、どきりとする。
「どーしたの」
意図の読めない行動と黙ったままの恋人に、多少の心配と
不安しか 残らない。
そんな僕を見て、楽しそうに笑うロウに、困惑する。
自然と、顔がむすっとなっていくのを自覚するが、感情を
制御するのではなく、感情に制御されている僕には
どうすることもできない。
「ははっ、わり、からかいすぎた」
そんな僕の顔を見てか、適当な謝罪を述べるロウ。
苛立ち半分と、愛しさ半分で愛しさがギリ勝った。
無邪気に笑うロウの顔は大好きだ。子供っぽくて可愛い。
他にも嫉妬してるロウも、不安がってるロウも可愛い。
でも、だからってやられっぱなしは嫌だ。
そう思って、ぐっと、力を入れて立つと、ロウの膝の上に
向かい合わせに座る。そしたらロウの目と合い
思わず、目を背けた。
でも、ロウがそんなことを許すわけがなくて、ぐいと
顔を無理やり向けされられると、噛みつくようにキスをされた。
ほとんど一瞬の出来事で数秒遅れで理解した。
優しく触れる手とは裏腹に、優しくないキスに惑わされる。
僕も、なんとか追いつくために、必死で舌を動かした。
一応僕も、器用な方な訳で、息を長く保つのには慣れている。
お互い、息が続くからキスが長くなるのは珍しくない。
ただ、 体力バカすぎて、エッチの後処理とかは 大変。
僕たちは、舌を使うキスしたら、自然とベッドに行って、
エッチをするって感じになってる。でも、たまに 今みたいに
ソファとかで、なんとなく挨拶みたいな感じでキスを交わす
こともある。その時、触れるだけの時もあれば、今みたいに
深い時もある。テレビとかもあんまり見ないから、静かな
空間に2人の息遣いと、舌が絡み合って、涎が混ざり合う音
だけが聞こえる。でも、そんなことは気にせず、お互いの舌を
食べるようにキスを続ける。甘噛みしたり、吸ってみたり
色々、試して、名残惜しげに軽く唇を押し当てて、唇を離す。
その時には、お互いの唇は涎でてらてらと光ってて、それに誘われて
またキスをすることも珍しくない。
僕たちはお互いを大好きなことも理解しているし、ぞっこんだとも
思う。こんな何気ない時にだからこそ、キスをしたくなるし
エッチの時には、なるべく体を密着させたいと思う。
お互いの事をなんでも知りたくなるし、知ってほしいとも思う。
それでもやっぱり、僕は一定の距離感を保ちたいけど。
ロウも、そう思えるところはある。
なんとなく、一定の距離感で、たまに近づくイメージ。
性格とか全部反対で、考え方も多分反対。だけど、その差が
逆にぴったりで、フィットしてる、僕はそう思う。
ロウは、知ってほしいとも思ってなければなければ、知りたいとも
思っていないらしい。確かに、そう見える。
僕も必要以上に知りたいタイプじゃないからいいのかもしれない。
でも、知りたいって言ったのも嘘じゃない。
性事情、過去、意思、知りたいこともある。ただ、
そこまで重視してないだけ。必要以上に僕の関係してない
ところを知る必要ないと僕は思うから。ロウだって
同じなんだと思う。僕の過去のこと、気にしてそうではない。
このまま関係が進むのを僕は望んでいるけど、もし、ロウが
もう少し、踏み込んで、僕の事を知りたいというなら、
僕はそれに応えると思う。僕もロウの事を好きだから
できることなんだろうけど。好きじゃない人とか、関係のない人には
あまり、僕のことに干渉しないでほしい、と思うのは
普通のことじゃないだろうか。とりあえず今はこの雰囲気に乗って
えっちしようと思う。後処理も2人でちゃんとやろ〜♪
コメント
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なんかもうすごく好きですこれ。