テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
夕方の街は、人の流れでゆるやかに満ちていた。
雑踏の中、ひまなつはどこか退屈そうに歩き、 その少し前をいるまが歩いていた。
「次どこ行く?」
「適当にどっか」
ぶっきらぼうな返事。
けれど歩幅はちゃんと揃っている。
ひまなつは、そんな背中を見て、ふっと笑う。
――やっぱ、かわいいな。
理由なんていらない。
ただ、その瞬間にしたくなる。
人の流れ。
柱の影。
ほんの一瞬、視線が途切れる死角。
「いるま」
呼び止める。
「なに……」
振り返ったその瞬間。
唇が触れた。
ほんの一瞬、軽く。
けれど確かに、奪うように。
「っ!?」
いるまの目が大きく開く。
「おまっ……!」
顔が一気に赤くなる。
「外だろ!!」
小声で怒鳴る。
ひまなつは肩をすくめる。
「誰も見てねーって」
実際、周囲からは見えない位置。
計算された悪戯。
「だからって……!」
怒っているのに、視線が泳ぐ。
耳まで真っ赤で、完全に動揺している。
その顔が見たくて、やっている。
けれど。
ひまなつはちらりと周囲を確認する。
誰にも見られていないことを、もう一度確かめる。
――これは、見せたくない。
この顔は、自分だけのものだ。
「もう一回すっか」
「は!?やるわけ――」
「そ?」
言い切る前に、ひまなつが少し距離を取る。
すると。
きゅ。
袖が掴まれた。
「……あ?」
視線を落とすと、いるまの手。
しっかりと、離さないように握っている。
「……しろよ」
ぶっきらぼう。
でも、声は少し小さい。
唇が、ほんの少しだけ開いている。
拒否じゃない。
むしろ、続きの合図。
ひまなつの口元がゆるんだ。
「素直じゃねーな」
今度は、少し長く 唇を重ねる。
さっきよりも深く、ゆっくり。
いるまの肩がぴくっと揺れる。
けれど、離れない。
むしろ服を掴む力が強くなる。
「……ん」
小さく漏れる声。
ひまなつは、あえて短く終わらせる。
わざと、余韻を残して。
離れた瞬間。
「……っ、なんでやめるんだよ」
いるまが眉を寄せる。
「続きしたそうな顔してたから」
「……は?」
「その顔、やばい」
軽く笑うと、 いるまは一瞬黙って、視線を逸らした。
「……外でやるな」
「出来れば、二人きりのときにしろよ…」
本音が 小さく零れた。
ひまなつはその横顔を見て、少しだけ優しくなる。
「じゃあ帰るか」
「……は?」
「続き、ちゃんとやる」
耳元で低く囁く。
いるまの肩がびくっと跳ねる。
「な、……」
言葉にならない。
でも、手は離さない。
ひまなつの袖を握ったまま。
二人はまた雑踏の中を歩き出した。
けれど、触れている部分だけがやけに熱くて。
キスの続きは、まだ胸の中で揺れていた。
【補足】
🍍は📢の反応見たさに悪戯心でキスすることが多い。
📢は自らすることはほとんどないが、🍍がしてくれたら、長くしてもらえるように仕草でおねだりしてちょっと頑張る。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
877
804