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天井の割れた窓から月光が差し込み、青緑に光る“夢ノ宝石キャンディ”が静かに輝いていた。誠也は、手のひらに飴を出す
飴はかすかに脈打つように光を放つ。
「……これを食べたら、全部の記憶が戻るんやろ?」
雅人は黙って頷く。
{だが……存在自体が消える可能性がある}
〈俺は信じる、存在が消えへんって……〉
良規の言葉に、雅人も頷く
{私もさ、存在自体が消えない事を願うばかり……。}
沈黙。
風がスタジオの隙間を抜け、埃が舞った。
『……やめようよ。そんなの危ないもん、もうええやん。』
晶哉の声が震える。
誠也は首を横に振った
「俺は辞めへん!だって、今までみんなと居た楽しい思い出など思い出したい……そりゃ、怖くないとか言ったら嘘になるで……。でも、俺は逃げへん。」
リチャードが小さく笑った。
【末澤らしいわ!】
健が肩をすくめる。
《ほんまにアホやけど……かっこええわ。》
〈ホンマは辞めてほしいけど……誠也くんが言うなら……絶対戻ってこいよ。〉
正門の声が震える。
誠也は一人ひとりの顔を見つめ、少し照れたように笑った。
「俺、どんな姿になっても、お前らのこと、きっと忘れへんと思う。」
その言葉を最後に、誠也はゆっくりと“夢ノ宝石キャンディ”を口に入れた。
カラン……。
誠也の手から瓶が転げ落ちた
飴が舌の上で溶け始めた瞬間、眩しい光がスタジオを包み込む。
『誠也くん!?』
晶哉が駆け寄ろうとした瞬間、身体が弾かれる。
光の中、誠也の姿が浮かび上がる。
幼いせーちゃん、青年の誠也、ステージで笑う姿……
すべての記憶がフィルムのように流れていく。
“お父さん、もうやめて……”
“俺、Aぇ! groupが好きやねん”
“ありがとう、せーちゃんって呼んでくれて
無数の声が交錯し、誠也の身体が淡く発光する。
やがて、光が静かに消えた。
そこに立って居たのは末澤誠也。
「……俺。」
〈誠也くん……?〉
良規がそっと名前を呼ぶ。
誠也は、少し間を置いて彼らを見た。
そして……
「みんな、ただいま!」
涙が止まらなかった。
健が笑う。
《おかえり、せーちゃん。》
『誠也く〜ん』
そう言いながら、誠也に抱きつく晶哉
「ちょっ、佐野!笑」
【良かったわ……。】
そう呟くリチャード。
{……誠也、すまない。}
「父さん……。」
{私は、許されないことをした……。別に、お前に許してもらえなくてもええ……。申し訳なかった……。}
その時……
背後で何かが“パリン”と割れる音がした。