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力無く倒れる体。
ザクリ、と不快な音。
体が鉛のように重い。
充満した鉄臭い匂いの中、空を見上げる。
仲間と笑って眺めたあの日と同じ、
広くて青い、美しい空。
そんな空が、何故だか滲んで見えた。
足を踏み出す。
自分自身が出したとは思えない荒い息と
ぐしゃり、と千切れた肉を踏む音が響く。
不協和音。そうとしか思えなかった。
霞む視界の中に、見慣れた建物が映る。
…司令塔だ。
司令塔の最深部、モニター室の扉を開ける。
sho「…た、ただいま…」
切れた息を戻しながら、弱々しく笑う。
だが、待っていた人の姿はそこにはなく、
悲しみを携えた一般兵がちらほらと居るだけ。
嫌な予感がした。
一般兵「…あ…シャオロン様…」
振り返った一般兵の目から涙が零れる。
背中の向こうに人集りが見える。
sho「…ッ…」
一般兵を押し退けて、人集りへと走る。
近付くにつれて、すすり泣く声が大きくなって
足音に気付いて振り返った一般兵の隙間から
目を閉じた…相棒の姿が見えた。
sho「…っあ…」
すやすやと眠っているようにも見えるその姿。
心臓の辺りに、赤黒い染みが出来ている。
声が、出なかった。
sho「ろぼ、ろ?」
護衛係の一般兵を庇って、
奇襲してきた敵兵が放った矢を受けた。
それも、俺が来るほんの少し前に。
そう、誰かが言っていた。
人混みをかき分けて、傍に座り込む。
sho「…はは、起きろよ、w」
赤く染まった手で、和服の袖を引く。
鮮やかなオレンジの布に、
知らない誰かの血が滲む。
とても冷たい。
俺が前線に行く前に
「生きて会おうな」って、約束したのに。
一般兵の命なんて、お前に比べれば。
もう見れない笑顔が
もう聞こえない声が
もう感じられないぬくもりが
走馬灯の様に蘇って
涙が止まらなくて、息が出来なくて。
世界が急速に色褪せる。
大切な仲間も死んで、
俺も沢山の罪を背負って、
もう、限界だった。
愛用の短剣を取り出す。
矛先を胸に当てて、グッと、力を込める。
ザクリ、と抵抗なく胸に沈む短剣。
周囲から漏れる悲鳴。
血が口から零れる。
フェードアウトする意識と痛み。
ほんの少しの生存意欲に、そっと蓋をして。
俺はゆっくり、瞳を閉じた。
「…約束、破ってごめんな、ロボロ」