TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

3000万年間封印されていたので、新たな世界を楽しもうと思います

一覧ページ

「3000万年間封印されていたので、新たな世界を楽しもうと思います」のメインビジュアル

3000万年間封印されていたので、新たな世界を楽しもうと思います

5 - 第四話「お前の夢なんて、俺には関係ないと思ってた」

♥

30

2025年06月10日

シェアするシェアする
報告する

リナの家に、居候することになったのは――正直、予定外だった。

「このまま野宿させるのもかわいそうだしって、母さんが!」

そう言って笑う彼女を見て、断る理由を探す気力も失せた。

結局、屋根のある暮らしに落ち着いた俺は、今日も村の片隅を歩いている。

「……変なもんだな」

木の実を拾って遊ぶ子どもたちの声を聞きながら、ポツリとつぶやいた。

3000万年の空白を経て、目にする光景がこれだとは思ってもいなかった。

人はまだ、こんなにも“普通”に生きている。

「おーい! 夢希くん!」

振り返ると、リナが駆けてくる。両手にパンを抱えていた。

「ちょっとお昼、早いけど一緒に食べよ!」

「……朝飯食ったばかりなんだけど」

「いいじゃん、時間とか気にしない!」

そう言って、俺の隣に腰を下ろし、パンを一つ差し出してくる。

「なあ、リナ」

「ん?」

「お前、ほんとに“世界の果て”とか行きたいのか?」

彼女はパンをかじりながら、少しだけ考えるような顔をした。

「うん。やっぱり、行ってみたいな。知らないものを見て、知りたい。昔のことも、人のことも」

「そんなに知ってどうするんだよ」

「うーん…… “知る”って、大事じゃない? 知らないままって、もったいないよ。だって、それだけで“出会わないまま”になっちゃうから」

その言葉に、ふっと心がざわついた。

3000万年――俺は、世界から切り離されていた。

出会わなかった。誰とも、何とも。

「夢希くんは…… “戻りたい”って思う?」

唐突な問いに、思わずパンを噛む手が止まった。

「戻るって……どこに?」

「昔、自分がいた場所とか……時代とか」

俺は答えに詰まった。

戻れるなら――戻るべきなのか?

けど、俺がいた時代に、もう“誰か”がいるとは思えない。

それに、あの世界に戻ったところで、俺は何をすればいい?

「……戻る理由が、ない」

「そっか」

リナはそう言って、にこっと笑った。

「じゃあ、これから一緒に理由を見つけに行こうよ」

「勝手に決めるな」

「ふふ、勝手じゃないよ。だって――夢希くん、寂しそうな顔してたから」

俺は、なにも言い返せなかった。

パンはもう、とっくに冷えていたけど、口の中にはほんのりと温かみが残っていた。

この作品はいかがでしたか?

30

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚