テラーノベル
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「天城。」
放課後の訓練場。
担任が雷斗を呼び止めた。
「お前、電気と聞いて何を思い浮かべる。」
「え?」
雷斗は少し考える。
「雷です。」
「速さです。」
「あと……攻撃。」
担任は首を横に振った。
「浅い。」
「えぇ……。」
担任はポケットからスマートフォンを取り出した。
「これは何で動く。」
「電気です。」
「照明は。」
「電気。」
「冷蔵庫。」
「電気。」
「エアコン。」
「電気。」
「信号機。」
「電気。」
担任はスマートフォンをしまう。
「電気は壊すための力じゃない。」
「動かすための力だ。」
雷斗は黙って聞いていた。
「家電を思い浮かべろ。」
「家電……ですか?」
「冷蔵庫は冷やす。」
「電子レンジは温める。」
「扇風機は風を起こす。」
「掃除機は吸い込む。」
「同じ電気でも用途は違う。」
「お前の異能も同じだ。」
雷斗は目を見開く。
「つまり……。」
「速くなる以外にも使えるかもしれない。」
「そういうことだ。」
担任は訓練場の端を指差した。
「走ってみろ。」
「はい。」
雷斗は右脚へ17%の電気を流す。
ドンッ。
いつもの加速。
562
misaka
117
318
「次は腕だ。」
「腕?」
「拳を握れ。」
雷斗は言われた通りにする。
電気を流す。
筋肉がわずかに反応する。
「重いものを持ってみろ。」
近くに置かれていた木箱を持ち上げる。
「あれ?」
少しだけ軽い。
「速さだけじゃない。」
「身体能力全体を底上げしている。」
雷斗は木箱を見つめた。
「じゃあ……。」
「目に流したら。」
担任は即答する。
「やめろ。」
「危険すぎる。」
「今のお前なら失明しかねない。」
「はい……。」
担任は珍しく苦笑した。
「だが考え方は悪くない。」
「電気の使い道は一つじゃない。」
雷斗は空を見上げる。
電気。
照明。
冷蔵庫。
扇風機。
信号機。
世界は電気で動いている。
ならば。
自分の異能にも、まだ知らない使い方があるのかもしれない。
「神速。」
その名前に縛られる必要はない。
雷斗は小さく拳を握った。
「もっと知りたい。」
「この力のことを。」
担任は静かにうなずいた。
「それでいい。」
「強くなるっていうのはな。」
「出力を上げることじゃない。」
「使い方を知ることだ。」
夕日が訓練場を赤く染める。
雷斗はもう一度、自分の手を見る。
17%。
それが今の限界。
でも。
可能性まで17%とは限らない。
そう思えたのは、今日が初めてだった。
体育祭まで残り1週間と3日
コメント
1件
読ませていただきました!担任の先生が「電気は壊すための力じゃない、動かすための力だ」って言うシーン、すごく印象的でした。雷斗くんが「速さ」だけに縛られず、自分の異能の新たな可能性に気づく成長が丁寧に描かれていて胸が熱くなりました。体育祭に向けて、どう変わっていくのか楽しみです🌷